7/6のYahoo!ニュースで『スリランカが「破産」宣言』というセンセーショナルなタイトルの記事がトップニュースを飾りました。
📰『スリランカが「破産」宣言 燃料不足、危機長期化(JIJI.COM 7/6-18:21配信)』
内容を見ると『スリランカのラニル・ウィクラマシンハ首相は5日、議会で演説し、国の「破産」を宣言した』というもの。
(ちなみにスリランカの国家元首は大統領(President)であり、その次の位置に首相(Prime Minister)がいます)
そのニュースを皮切りにメディア各社が『破産宣言』という言葉をタイトルに使っています。
しかし、スリランカ国内では同日の首相の議会での発言は下記のように報道されおり「破産宣言」の見出しはありません。
📰『First round of talks with IMF successful: PM(Daily Mirror 7/5-12:08配信)』(IMFとの第一回協議は成功ー首相)
首相の発言内容全文は下記に記載していますが『ウィクラマシンハ首相は本日議会において、国際通貨基金(IMF)との第一回目の話し合いは成功したが、今年8月に債務再編プログラム報告書をIMFに提出する予定であり、支援はスリランカが打ち出さなければならない債務再編プログラム次第であると述べた』という内容になっています。(記事全文は上記リンク先をご確認ください)
📰『Ranil outlines roadmap to revive collapsed economy(Daily FT 7/6-00:00配信)』(ラニル首相は崩壊した経済を再生させるためのロードマップを概説した)
『(ラニル)ウィクラマシンハ首相は昨日議会において、現在進行中および計画中の危機回避措置、ならびに経済の状況や国が直面する課題について報告を行った。全文は以下の通り…』という内容になっています。(記事全文は上記リンク先をご確認ください)
📰『PM updates Parliament on crisis resolution progress(Daily FT 7/6-00:00配信』(首相、経済危機解決の進捗状況を議会に報告)
『ウィクラマシンハ首相は昨日議会において、現在進行中の国際通貨基金(IMF)との協議は一筋縄ではいかず多くの難局の中、最初の協議は効果的に終了したと述べた』
そして議会で首相が演説した同日(7/5)には、日本のメディアでも2つニュース記事になっています。
📰『スリランカ、貨幣増発の停止目指す-インフレ率60%に達する見通し(Bloomberg 7/5-15:24配信)』
記事内容は『スリランカのウィクラマシンハ首相は5日、貨幣の増発停止を目指すと表明した。インフレ率が60%に達する見通しであることも明らかにした。首相は議会での演説で、財政が破綻したため、国際通貨基金(IMF)との支援交渉が複雑化していると指摘。IMFとは8月にスタッフレベルの合意に達するとの見通しを示した。以前は6月までの合意を目指す考えを示していた』(記事全文は上記リンク先をご確認ください)
📰『8月末までに債務再編計画提出 経済危機のスリランカ、IMFに(JIJI.COM 7/5-20:49配信)』
記事内容は『ウィクラマシンハ首相は5日、議会で演説し、国際通貨基金(IMF)に対し、金融支援を得るための債務再編計画を8月末までに提出すると表明した。地元メディアやロイター通信によると、同氏は最大都市コロンボで6月下旬に行われたIMFとの対面協議が成功裏に終わったとの認識を示した上で、「破産国家として協議に参加しているため、以前より交渉は困難で複雑になる」と述べた』(記事全文は上記リンク先をご確認ください)
そう、このウィクラマシンハ首相の議会での演説は、6月下旬に行われた国際通貨基金(IMF)との1回目の対面協議の結果報告と今後の債務再編の展開について述べたものです。
それが、JIJI.COMでは1日経って同じ議会での同首相の発言に対して📰『スリランカが「破産」宣言 燃料不足、危機長期化(JIJI.COM 7/6-18:21配信)』と別の記事にしています。
それ以降(7/6以降)の日本でのニュース記事は軒並みタイトルに『破産』『破産宣言』とつけられています。
スリランカは5月にすでに破産(国として倒産)しているとみなされています。
スリランカ中央銀行は、4/12に対外債務全額の返済の一時停止を発表しました。そして、2023年と28年に満期を迎えるドル建て債の利払い支払い(7,800万ドル)の猶予期間が5/18に終了を迎え、5/19にスリランカ中央銀行総裁が「債務再編完了までドル建て債務の支払いを行わない」と宣言したことで、海外の債券保有者に対する支払いを停止した2022年で最初の国となり、事実上のデフォルト(債務不履行)となっています。
三大格付け機関の一つ、ムーディーズは、4/18付けでスリランカの格付けを従来の「Caa2」から「Ca」への引き下げています。S&Pグローバルもスリランカの外貨建て国債の信用格付けを「部分的な債務不履行(デフォルト)」にあたる「選択的デフォルト(SD)」に引き下げました。では、7/5に首相は議会でどのような演説を行ったのでしょうか?
上記で掲載したデイリーミラーの記事の首相の発言箇所を取り上げてみます。長いので機械翻訳を使っていますので、演説内容の原文は(📰『First round of talks with IMF successful: PM(Daily Mirror 7/5-12:08配信)』または📰『Ranil outlines roadmap to revive collapsed economy(Daily FT 7/6-00:00配信)』)をご確認ください。『破産』について触れていると思われる箇所を赤字にしています。
果たして首相のこの演説は「破産宣言」でしょうか?
我が国はこれまで何度もIMFと協議を行ってきた。しかし、今回はそのどれとも状況が異なる。そのため、これまでの交渉とは異なり、より困難で複雑な状況に直面することになる。
スタッフレベルの合意ができれば、それをIMF理事会に提出し承認を得ることになるが、我が国は破綻状態にある(But due to the state of bankruptcy our country is in)ため、債務の持続可能性に関する計画を別途提出する必要がある。
これは一筋縄ではいかない。このような困難にもかかわらず、我々は効果的に議論を終了させることができた。
現在わが国の経済は縮小している。我々はそれを逆転させようとしている。中央銀行の統計によると、現在の経済成長率はマイナス4からマイナス5だ。IMFの統計では、マイナス6からマイナス7である。これは深刻な状況だ。
このロードマップに沿って決然と遂行すれば、2023年末には経済成長率をマイナス1にすることができる。
これまでの債務について、ここに述べる。
今年の6月から12月までに34億ドル。2023年に58億ドル。2024年に49億ドル。2025年に62億ドル。2026年に40億ドル 2027年に43億ドル。
2021年末の政府の債務負担総額は17.5兆ルピーで、2022年3月には21.6兆ルピーに増加した。これが現況。
今年末には、インフレ率は60%に上昇するだろう。これは主に、世界における物価の上昇とルピーの価値の下落によるものである。
現在のインフレによるルピーの下落は、従業員積立基金(EPF)と従業員信託基金(ETF)のお金の価値を50%下げ、年金の実質価値も50%下落させている。
ポジティブなアイデアを提示するのは簡単であるが、これらの問題に対する答えを見つけるのは困難である。
では、どうすればいいのか。
一刻も早くルピーを安定させること、ルピーを下落させずに強くすることである。
そのために、将来的に紙幣の印刷を制限する計画をたてた。
もうひとつの最優先課題は、銀行・金融システムを保護すること。
経済危機の際にこれらのシステムにかかる圧力は、この議会であらためて説明する必要はないだろう。政府は銀行・金融システムの強化に優先的に取り組んでいる。
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