海外で犬や猫と暮らしていて、本帰国時に一緒に日本に連れて帰ろうとしている方は多いかと思います。ただ、人間と違って動物を日本に連れて帰るには多くの事前手続きが必要です。
特に2回目以降の狂犬病予防注射後に行う、狂犬病抗体検査用の採血日から180日間の待機期間が必要なので、半年以上前から準備をしなければなりません。
実際にスリランカから猫を連れて帰った経験談を基に、手続きの流れを記録として残しておこうと思います。
【前情報】
動物種:猫(雑種)-名前は「ニコ」
帰国時の年齢:約1歳半※保護猫(2023年7月保護)のため正確な生年月日は不明ですが、獣医師による推定月齢の判定を基に、動物病院の予防接種記録手帳を作る際に、2023年5月1日生まれに決定
帰国日:2024年6月末
利用便:スリランカ航空(UL454便)
【はじめに】
入国(輸入)条件の確認や手続きの流れは、🔗農林水産省動物検疫所の輸入手続きの手引書(「犬、猫を輸入するには」)に沿って進めました(※犬の場合は、今回紹介する猫の場合よりも条件が多いため注意)。
スリランカ政府動物検疫所で行う輸出前検疫では、証明書発行に際してワクチンの記録など動物病院の記録の全頁を確認されました。
予防注射の記録等は必須ですが、そのほかもできる限り詳細に記入してもらうようにしておきましょう。政府動物検疫所では、駆虫の記録がないと指摘を受けました。日本は輸入の際の必須事項にはありませんでしたが、検疫所の方曰く輸出国によっては記録が必要とのことでした。
ちなみにPet V Careでは処置の一環として駆虫薬を投与されましたが、記録には残っていませんでした。その後も、駆虫薬も含めて投薬や受診についての記入はないため、必要とあれば普段から記入を依頼してもらうと良いかと思います。避妊手術時も記録手帳に何も記載されなかったため、こちらから手帳への記録を依頼しました。
↑ワクチン接種の際は使用ワクチンのラベルや接種日、実施動物病院ならびに獣医師の署名があることを確認しましょう!↑Pet V Careの記録手帳の見開きのページ。マイクロチップ埋め込みの際にマイクロチップ番号が貼付されましたが、政府動物検疫所では、マイクロチップの埋め込み日の日付も記載するように指示を受けました。
【狂犬病抗体検査(抗体価が規定値以上であることの証明書の取得)のための血清の取得】
2回目の狂犬病予防注射後(同日可)に採血した血清を、検査施設に送付し狂犬病に対する抗体価を測定してもらう必要があります。輸入条件は狂犬病に対する抗体価が0.5IU/ml以上でなければなりません
狂犬病に対する抗体価の測定は、日本の農林水産大臣の指定する検査施設で行う必要があります。指定検査施設のリストは、🔗このリンクから確認できます。スリランカには指定検査施設がなかったため、私は、リストにあった日本の🔗一般財団法人生物科学安全研究所に依頼しました。狂犬病抗体検査証明書(兼申請書)は日本語様式もありますが、証明書記入元(私の場合はスリランカ)で認可される言語の様式である必要があるため英語の様式を使用。
ただ、ここでひと悶着ありました。狂犬病抗体検査証明書(兼申請書)には、採血獣医師の直筆のサイン(署名)が必須となります。
一般財団法人生物科学安全研究所は、ハンドキャリー(人による携帯輸送)での日本国内への輸送も可能(※但し犬の血清(血液)の場合、事前に輸出入検疫を受ける必要があるので注意。猫の血清の場合は不要)としていて、ハンドキャリーで国内に持ち込んでから日本入国後に郵送の手順が可能と記載があり、メールにて確認したところ、検体の送付元は飼い主(ただし、同封する狂犬病抗体検査証明書兼申請書の獣医師記入欄への記入は必須)からでも動物病院からでも受け付けているとの回答であったため、一時帰国時にハンドキャリーで持ち込む予定だと動物病院に伝えると、血清を持ち帰るならば申請書類に署名はできないと言われてしまいました(すり替えなどを危惧?)。
それならば動物病院から直接、一般財団法人生物科学安全研究所に送ってほしいと告げると、これまではイギリスの検査施設に送っており、上記の日本の検査所には送ったことがないのでイギリスに送るので良いなら引き受けると言われてしまいました。
イギリスの検査施設に送った場合の費用やかかる時間が上記の日本の検査所への送付よりもはるかに上回っていたため、動物の輸入検疫や一般財団法人生物科学安全研究所の該当ページを印刷して説得するも見解変わらず。
そんな時に、2012年にスリランカから猫を日本に連れ帰った方がいたので、手続きについて相談してみると、その方は偶然にも同じ動物病院(当時の所在地は異なる)を利用していて、その動物病院から検体(血清)を受け取り、スリランカから自己手配で日本の同検査所に送付したとのこと。書類を保管しているとのことで書類のコピーをもらい、改めてそのコピーを見せると、見解が変わり検体の持ち帰りが許可されました。さらには検体の内容証明書も発行してくれたました。(注:猫の場合は証明書の携帯は必須事項ではありません。反対に犬血清の場合は、狂犬病とレストスピラ病に罹患していない旨の輸出国政府機関による証明書又は獣医師による証明書に輸出国政府機関の裏書きしたものが必要となるようです )。
(※スリランカ人気質として、前例にないものに対してはとても慎重になる傾向にあります。反対に今回のように前例があればスムーズにいくという典型的な例でした)
【血清の保存と送付(持ち運び)】
ちなみにハンドキャリーにしても海外からの送付にしても、血清を輸出(持ち出し)するための包装は、🔗IATA(国際航空輸送協会)の650号(感染性物質 infectious substanceを含む可能性が低い診断材料diagnostic specimenの包装指示)に準拠する必要があります。三重包装を原則として、輸送による振動、また温度、湿度及び気圧の変化に際しても診断材料が漏れ出さない構造でなければならないとあります。
血清の保存ならびにハンドキャリーでの輸送方法について一般財団法人生物科学安全研究所に問い合わせた際に、下記の回答がありました。
『血清は冷蔵で3か月ほど検査可能な状態を保持できます。常温でも1週間ほど保存できますが、なるべく冷たい状態が続いたほうが傷みにくいので帰国の際は可能でしたら少量の保冷剤を添えて頂き移動されると良いかと存じます』
上記の回答を受けて、動物病院より血清を受け取り、一時帰国までは自宅の冷蔵庫で保存。帰国時は保冷剤を添えて手荷物として機内に持ち込みました。何か指摘された場合に動物病院が発行してくれた検体証明書を出せるようにしていましたが特に指摘はありませんでした。ただ、手荷物よりも預け荷物に入れた方が良かったかもしれないと思いました(預け荷物で指摘された場合は手荷物としてのオプションがあるけれども、手荷物で搭乗前の検査の際に指摘されてNoといわれた場合は手放す以外にオプションが無いので)。
梱包については、🔗農林水産省動物検疫所の三重包装の例(IATA650準拠)(下記図)を参考にしました。動物病院からは、下記図の1次容器(ラベル付き)に入れられた状態であったため、ジプロックに左記の一時容器を脱脂綿でくるんで挿入(二次容器)して、さらにジプロックの開封口をテープで密封しました。ジプロックの表面には、検体情報(猫血清/Serum of Cat)、 猫の名前、マイクロチップ番号、 生年月日を英語で記入した紙を貼付しました。
そのまま搬送日まで冷蔵庫で保存し、搬送日はプラスチックの容器(タッパー)に脱脂綿と二次容器、上記の検体情報の紙をもう一枚入れて、タッパーの開封部をテープで封をしました(三次容器)。それをアルミフィルムの保冷袋に小さい保冷剤(100ml以下であれば、機内持ち込み可能なため)を入れて手荷物として持ち込みました。日本到着後は、三次容器の状態で発砲スチロール箱に新しい保冷剤と、狂犬病抗体検査証明書(兼申請書)を入れてクール宅急便で一般財団法人生物科学安全研究所に送付しました。
証明書はスリランカの住所(申請住所)にEMSで届きました(証明書の送料は検査料金に含まれているようです)。ニコの抗体価は1.1IU/mlと、基準値(0.5IU/ml以上)をクリアしていました。【航空券の予約】
日本到着40日前までに、到着予定空港管轄の動物検疫所に届出が必要なため、帰国の約2か月前に航空券を予約しました。
2024年の時点で、スリランカ-成田の路線でトランジットも含めて猫を機内に持ち込める航空会社はなく(以前就航していた大韓航空は機内持ち込み可能だったようです)、日本までの唯一の直行便となるスリランカ航空UL454便(コロンボ-成田)を利用することにしました。
スリランカ航空では、基本的に猫※、犬※、鳥、ウサギ、観賞魚は受託手荷物(checked baggage)として預けることが出来ます。ただし、貨物室に空調設備を兼ね備えた機体の場合に限るとのこと( https://www.srilankan.com/en_uk/PlanAndBook/luggageの[Pets and Service Animals]の項を参照)。費用は、無料手荷物許容量範囲内でも別途超過荷物料金(利用当時は1kgにつきUSD31)がかかります。
※スリランカ航空が定める預かり不可の犬種・猫種(↓下記)
チケットの予約前に、搭乗条件等を確認しにコロンボのスリランカ航空のオフィスに出向きました。
基本的にコロンボ-成田便(UL455/UL454)は空調設備を兼ね備えた機体とのことでしたが、まずは搭乗日が決まったら、搭乗日の機体が預かり可能な機体かどうか確認するため、チケットは仮予約となりました。
仮予約の際に、輸出前検疫や運搬のペットキャリーの条件や連絡先など必要事項を書いた紙(下記写真)を頂きました(※PCR検査は2024年時点では不要。また、いくつかの連絡先や人物が変わっていました)。あくまでスリランカ航空は全ての輸出基準をクリアした場合にのみ預かり可能とし、その手続き等において一切スリランカ航空は関与しないと念を押されました。
仮予約の翌日に、スリランカ航空より搭乗日の機体についての回答が来ました(電話連絡)。.png)
発券されたEチケットには、動物連れであることがちゃんと記載されていました。
【キャリーケージ/ペットケンネル】
スリランカ航空の場合、預け荷物のペットケージはIATA (International Air Transport Association)の基準を満たしている必要があります。使用ペットケージが基準に満たしているかどうか、上記でもらった紙に記載のある場所で事前に確認するように言われました。
私は、以前猫を飼っていた時に使っていたペットキャリー(約10年前に購入)を一時帰国の時にスリランカに持ち帰り使用しました。
参考:↓私が使用したキャリーケージ(サイズ55x33x32cm)
🔗『航空輸送対応 ペットキャリー一覧/Amazon』参考【ペットの貨物輸送】
今回は、受託手荷物(checked baggage)として預けることが出来ましたが、コロナ禍は受託手荷物としての預かりが不可(出発ターミナル内へのペットの持ち込みができない)となってたそうです。また、スリランカ航空も成田-コロンボ路線は可能ですが、受託手荷物としての輸送が不可の路線もあるとのことです。
受託手荷物として預けられない場合や、ペットのみを輸送する場合は、貨物としての輸送になります。貨物としての輸送の場合は、取り扱いは貨物部Cargoとなり、貨物運賃や一時保管施設利用料など、通常の受託てにもつとは異なる上、引き渡し場所も一般の空港ターミナルとは異なるなど、手配や手続きが複雑なため業者に委託する方が良いとのことです。
規定がまた変わり、万が一受託手荷物での預かりは出来ないといわれたときのために、スリランカで貨物での動物の輸送手配を行なう業者を検索したところ、日本人が経営している🔗Suketto LKがありました。利用することはありませんでしたが、日本語対応も可能とのことで貨物輸送の際には利用しやすそうです。
【日本への事前届け出】
日本到着40日前までに、到着予定空港管轄の動物検疫所に届出が必要です。
届け出は、🔗NACCS(動物検疫関連業務)を通じて電子申請しました。NACCSを通じて申請すると、日本到着後の検疫時に「輸入検査申請」ならびに「狂犬病予防法に基づく動物の輸入に関する届出書」が電子申請となり、書面での提出は不要となります。
審査後に届出受理及び申請完了の通知がメールで届きます。また、届出受理書(下記写真)などの書類は、受理後にダウンロード可能なります。これらの書類は輸出国(スリランカ)での輸出前検疫の際や帰国時の携行書類として印刷が必要です。
【 輸出国の証明書の取得】
出国直前(出国前10日以内)に、民間獣医師ならびに輸出国政府機関の獣医師による輸出前検査(臨床検査)を受け、輸出国の証明書の取得が必要となります。
証明書の取得は政府検疫所となります。スリランカの動物検疫所(Government Quarantine Station for Animals)はコロンボ(No.42, Mogan Rd,Colombo 02)と空港のあるカトナヤケなど複数箇所にあります。
【Department of Animal Production and Health (DAPH)- Animal Quarantine Officeへの問い合わせ】
【 搭乗当日】
搭乗予定の前々日にスリランカ航空に連絡をして、動物連れの搭乗予定であること。使用機体に変更はないかを確認。幸い変更はなく予定通りニコを受託手荷物として預けられることに。【成田空港到着後】
成田到着後は、どこで待ってていいかわからずグランドスタッフに聞いてみると、荷物受け取りのエリアにいてくださいと言われたため、スーツケースの受け取り場所で待機。
しばらくするとニコの入ったケージを持ったグランドスタッフが出てきました。すぐさま駆け寄り名前を呼ぶと、小さく「ニャー」と返事。持っていたチュールをあげるとぺろぺろ。まずはほっと一息。
スーツケースも受け取り、そのまま動物検疫のコーナーへ。そこで再度書類を提出。マイクロチップの読み取りが完了すると、しばらくして検疫証明書が渡され終了。動物検疫所での所要時間30分足らずで拍子抜け。
以上が、海外(スリランカ)から猫を連れて帰国した際の一連の記録です。猫を連れて海外から帰国しようとしている方の参考になれば幸いです。
ただ、コロナの時のPCR検査のように、その時々でルールや必要書類などは変わる可能性がありますので、最新の手続き手順や情報を必ず確認してください。
【後日談】
ちなみに到着日は、検疫にどれくらい時間がかかるのかわからなかったので、ペット可であった🔗タカノプライベートレンタルハウスを利用しました。
コメント
コメントを投稿