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【セイロンコーヒー復活】スリランカのコーヒー事情とコーヒーブランド

スリランカといえば「紅茶の国」
"セイロンティー"(セイロンはスリランカの旧国名)としても親しまれています。

19世紀のスリランカ(当時のセイロン)は、ブラジルやインドネシアと並ぶ世界有数のコーヒー産地でした。

歴史によれば、スリランカのコーヒーは1503年にイエメンからのアラブ商人によって持ち込まれたものが自生したといわれています。しかし、スリランカの原住民はコーヒーの実(豆)は利用せずに、葉はカレーの味付けに、花は家の仏像や寺院訪問の際の供花に用いられていました。

オランダの植民地支配下にあった1780年頃にオランダ人が商品作物としてコーヒーを植え始めたとされています。その後イギリスの植民地支配下となった後もコーヒーの栽培は引き継がれ、コーヒー農園は拡大し続けました。

コーヒー産業から紅茶産業への転換
1830年から1845年までの15年間は、イギリスではスリランカ(当時は"セイロン")は「コーヒー・マニア」と呼ばれており、スリランカのコーヒー産業には多くの投資が行われていました。
ジャマイカのコーヒー農園で経験を積んだ農園主R.B.バトラーが、1837年にセイロンに来て、より良いコーヒーを収穫する方法を導入しました。
その成果もあり、1863年には、ヨーロッパに輸入されたコーヒーの額は2億7千万ポンドに達し、その3分の1近くがスリランカから輸出されたものとの記録があります。

しかし、コーヒー産業が盛んとなった1860年頃からコーヒーの葉にオレンジ色のシミが現れ始め、1870年にはスリランカ全体に広がり始めました。
この真菌症は『コーヒーサビ病(Hemileia Vastatrix)』と呼ばれるものでした。

1880年にはこの病気によってコーヒー農園が壊滅し、セイロンのコーヒー産業は衰退しました。
1870年には27万5千エーカー(約11万1,300ヘクタール)あったコーヒー農園の規模は、1900年代にはわずか1万1,392エーカー(約4,610ヘクタール)にまで減少しました。

スリランカのコーヒー文化 ―「コーピー(copi)」】
1866年にスコットランドからやってきたジェームステイラーが紅茶の栽培を試験的に始め、1872年にはスリランカ最初の紅茶工場が作られ販売が開始されました。
スリランカの気候風土に合致した紅茶栽培は広がり、スリランカは「コーヒーの国」から「紅茶の国」に転換しました。

濃い目に淹れた紅茶に大量の砂糖とミルクパウダーを入れて作るキリテー(ミルクティー)や、紅茶を煮出す時に生姜を入れたイグルテー(ジンジャーティー)、コリアンダーシードを煮出したお湯で淹れた紅茶を孔雀椰子の糖蜜をかじりながら飲むコッタマンリテー(コリアンダーティー)など、スリランカの日常に紅茶はなくてならないものとなっています。

それでもコーヒー粉を常備している家庭も多くあります。しかし日常的にはあまり飲まれず、コーヒー(コーピー)というと、お腹を下した際の民間療法として、ライムを絞ったコーヒーを飲む習慣もあります。

もともと自生していたコーヒーでしたが、熟したコーヒー豆を鍋で焼いて(炒って)煮出した自家製コーヒーを飲んでいたとのこと。

スリランカで一般に販売されているコーヒーは細挽きの粉末タイプが主流で、ホテルやレストランで提供されるコーヒーもコーヒーの粉末を沈殿させて上澄を飲む方式が主となっていました。

「コーピー(copi)」から嗜好品としてのコーヒー(coffee)"へ
しかし最近では、コーヒーを嗜好品として飲む人も多くなり、ホテルやカフェなどでもドリップコーヒーが飲めるようになっています。

"セイロンコーヒー"の復活
19世紀には壊滅的となっていたスリランカのコーヒー産業。
しかし1996年にオランダ人のHarm van Oudenhovenが野生化したコーヒーの木を見つけました。Oudenhovenは、NGOの仕事でスリランカに移住していたシアトル出身の焙煎士ローレンス・ゴールドバーグとともに、品質の高いコーヒー豆の生産に取り組みました。
ローレンスは有機農法や薬草にも精通しており、両者は栽培や選別、品種改良を重ねながら、製品として出荷できる品質のコーヒー豆の開発に尽力しました。

現在、スリランカの丘陵地帯の各所でセイロンコーヒーが栽培されています

多くのコーヒー農家は80年代にラニル・セナナヤケ博士がスリランカで開発した作物管理法「アナログ・フォレストリー」を実践している所が多いといいます。
コーヒーだけではなく、胡椒など他の商業作物と併せて栽培され、自然の樹冠を切り崩すことなく栽培する、シェードグロウン(木陰栽培)に共通した方式です。
単一栽培による病気の発生を防ぐとともに、環境にも優しく、持続的な栽培が見込めるといいます。

スリランカでは、主にアラビカ種 (Coffea arabica) とロブスタ種 (Coffea canephora)のコーヒーが栽培されています。

追記)DEA(Department of Export Agriculture)の統計によると、スリランカのコーヒー栽培面積は2022年時点で4,787ヘクタール(約11,830エーカー)となっており、2021年に2,439メトリックトンだった生産量は、2022年末までに2,537メトリックトンに増加しています。
輸入市場も拡大しており、2021年にはコーヒーの輸出量は50.56メトリックトンで、おもな輸出国は、オーストラリア、アラブ首長国連邦、米国、モルディブ、ニュージーランド、チリ、英国、ドイツとなっています。
しかしながら、国際的な輸出基準を満たすスリランカ産コーヒーはわずか約20~30%で、認証プロセスの普及が課題となっています。

セイロンコーヒーブランド❶【Hansa Coffee】
上記で野生化したコーヒーの木を見つけたOudenhovenは、焙煎士Lawrenceとともに製品として出荷できるコーヒーの栽培ならびに選別、改良に尽力したと紹介しました。
そのLawrenceが 2004年に設立したのがHansa Ceylon Coffee(Pvt)Ltd.。Hansa(ハンサはサンスクリット語由来で「白鳥/ガチョウ」の意味) Coffee"のブランド名で流通を開始します。(ハンサは❛ガチョウ❜とする説もありますが、こちらの会社は英名をBlue Swanとしています)
セイロンコーヒーの筆頭ブランドでもあるこの会社のコーヒーは、現在スーパーやBarefootなどでも 取り扱いがあるほかJetwing LighthouseやCeylon Tea Trailsなどラグジュアリーホテルの部屋にもコーヒープレスとともに置かれています。
スリランカの標高1,600メートル以上の場所の小規模農家において、シェードグロウンという栽培方法にて育てたアラビカ豆を調達し、手作業で選別して焙煎したコーヒー豆です。

セイロンコーヒーブランド❷【Amba Estate】
スリランカの中でも貧困率が高く、投資が最小限に抑えられているウバ州に、経済的機会と環境回復のモデルを作るために創業された農園(会社)で、現在はファームステイやファームツアーなどのアグロツーリズムだけでなく、ここで生産ならびに加工されるジャムや紅茶などの製品の品質やブランド力も高い会社です。Ambaはシンハラ語で"マンゴー"の意味です。
日本でも紹介されているので、名前を聞いた事がある方もいるかもしれません。

Amba estateのコーヒーは、疫病の生き残りから採れたもので一般的なアラビカ種の豆より大きいのが特徴です。
またこの豆は焙煎機ではなく、パンローストされているため、一般的なコーヒーとは異なる香りと味が特徴とされています。
製品の収益の10%は労働者と地域社会に還元され、収益の1%は従業員が管理する福祉基金に充てられ、コミュニティ形成のための活動や投資、村の家族への支援に使われています。農場での付加価値は、地元の雇用を300%、地元の収入を400%増加させたといわれています。

セイロンコーヒーブランド❸【Wight & Co.
Whight & Co.はスリランカ在住のオーストラリア人の夫婦(人気のクリケットクラブカフェのオーナーでもあります)が12年の歳月をかけて立ち上げたコーヒー会社です。
ハンサコーヒーが焙煎豆の仕入れを開始したのと同じ頃、夫妻は最高のコーヒーを作るために、コーヒーのサンプルを集めていました。
最も優れたサンプルは、100年以上前にエチオピアで栽培されていた系統を受け継ぐものでした。
スリランカのヌワラエリヤは赤道から約7度の位置にあり、エチオピアのJimmaゾーンと同じ緯度線上に位置しています。
2002年には、夫妻はヌワラエリヤの渓谷に100エーカーの土地を確保し、オリジナルブランド「ルビー・ハーベスト」の豆の生産を開始しました。
2000〜3000株の苗木からスタートでした。

夫妻は、コーヒーの植え付けから収穫、加工、焙煎に至るまで、すべての工程に自ら関わっています。
地元の村の女性たちにより手摘みされた実は、天日乾燥させ外皮を取り除き選別されたものを自社のカフェレストランに送り、カフェの焙煎室で焙煎されています。焙煎は韓国で焙煎技術を学んだ夫のジェームズ氏が店舗で行い袋詰めをしています

セイロンコーヒーブランド❹【LYBS】
LYBSのコーヒーは、伝統的な有機栽培農家が流通から排除されないように、可能な限り小規模農家や企業からコーヒー豆を調達しており、独自の方法により焙煎しています。
その日に焙煎されたコーヒーは、香りを保つためにその日のうちにすべて包装されています。
LYBS社は男女平等と女性のエンパワーメントを優先し、調達先やサプライチェーンで数名の女性を雇用する方針をとっている会社でもあります。

セイロンコーヒーブランド❺【Helanta Coffee】
2012 年からコーヒー業界に携わっているTharanga Rajith Muramudali氏が立ち上げたブランドで、スリランカ産コーヒーの大手輸出業者の一つで、日本向けにも輸出しています。
スリランカの丘陵地帯にあるコトマレ地区の1,500 以上の小規模農家のネットワークからコーヒーを集めて焙煎しています。
高品質のフォレストガーデンコーヒーを生産するために、定期的なコーヒー農家訪問とトレーニングを行い、オーガニック技術を推進しています。利益の一部は、コトマレ地区の学校やコミュニティのイベントを支援するためにも使用されています。

セイロンコーヒーブランド❻【Soul Coffee】
Soul Coffeeは、2014年に設立されたコーヒーブランドで、"Coffee for the Soul "というシンプルな目標を掲げる国内のプレミアムセイロンコーヒーのトップブランドになっています。
セイロンコーヒーを国内のスーパーのみならず、中東やスイスにも輸出もしており流通が広いブランドでもあります。
スリランカの丘陵地帯のコトマレやエッラ、ウェリマダなどの標高1,200m以上の地域にある300以上の農家から豆を調達しています。取引農家にはコーヒーの苗木、肥料、機械を提供し、収穫物の価格を保証しているほか、コーヒーの単一栽培は行わず、環境に配慮した持続可能な栽培を手掛けています。

セイロンコーヒーブランド❼【Tusker Coffee】
Tusker(牙のある雄ゾウを"タスカー"といいます) Coffeeは、スリランカの標高1,200メートルにあるバンダーラウェラにある「アヴァガマ・オーガニック・ファーム」の苗床でアラビカ種の苗を開発して小規模農家に提供したものを収穫し少量ずつ焙煎してできたものです。
アヴァガマ・オーガニック・ファームは9エーカーのオーガニック・ファームで、パーマカルチャーを目指した有機農法、バイオダイナミック農法を実践する商業農場です。

セイロンコーヒーブランド:番外編【Island Coffee】
スリランカのローカルに馴染み深いコーヒーといえば、このIsland Coffeeかも知れません。
スーパーマーケットや商店で必ず見かける老舗コーヒー会社で、創業は1964年となります。
基本となる豆の販売は3種のみですが、バニラやスパイスなどフレーバーコーヒーも充実しています。
ただ、こちらはコーヒーというよりコーピーとなります。

"セイロンコーヒー"は豆で!
セイロンコーヒーは是非、豆でお買い求め下さい。
というのは、挽き豆は細挽き(粉状)が多く、沈殿させるかコーヒープレッサーで飲むのに適しています。
フィルターで淹れると目詰まりを起こし濾過が出来ません
フィルター派は豆での購入をお勧めします。

「紅茶の国」として有名なスリランカですが、実は「コーヒーの国」でもあった歴史があります。近年復活を遂げつつあるセイロンコーヒーは、お土産としてもおすすめ。スリランカを訪れた際には、ぜひ紅茶とともに個性豊かなセイロンコーヒーも味わってみてください。
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