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日本も含めて、世界各地に様々な仮面(お面)がありますが、スリランカにも様々な仮面があり、今日では人気のお土産物の一つともなっています。
スリランカの仮面彫刻や仮面舞踏の文化は、南部沿岸地域のアンバランゴダが発祥とされています。
スリランカ西部と南西部の沿岸地域に住む漁民の中で、特にアンバランゴダを中心とする南西海岸地域は悪魔祓いなどの風習があり、仮面を使った儀式や舞踏が行われてきました。それに伴い、仮面の製作(彫刻)も盛んとなりました。
📝スリランカの悪魔祓いについて知りたい方は、下記の本がお勧めです
現在も『仮面の町』として有名ですが、現在は儀式や舞踏のための仮面製作よりも、装飾や土産として購入されることが多くなっているとのことです。
仮面彫刻師は主に世襲制で何世代にもわたって受け継がれています。
↑アンバランゴダで5世代にわたる仮面彫刻に携わるアリヤパーラ家の仮面博物館兼ショップの『Ariyapala & Sons』【スリランカの仮面の種類】
スリランカの伝統的な仮面は3つに分けられます。
スリランカで使用されるマスクの種類には、以下のようなものがあります。
仮面を用いた舞踏や儀式にはさまざまな種類がありますが、その中でも代表的な民俗劇がコーラムダンス(Kolam Dance)です。
1.Raksha Mask(ラクシャマスク)-悪魔の仮面
2.Sanni Mask(サンニマスク)-病魔の仮面
3.Kolam Mask(コーラムマスク)-風刺された人の仮面
1.Raksha Mask(ラクシャマスク)
祭りや儀式で使用される悪魔の仮面で、現在では家の入口などに魔除け(福寄せ)としても飾られたりするほか、スリランカのお土産物店やカルチャーショ―でもよく見かけるマスクです。
↑人気のアーユルヴェディックコスメのSpaCeylon(スパセイロン)のフェイスパックのパッケージもラクシャマスクがデザインされています。ラクシャの仮面には24の形がありますが、現代ではおもに6種類が主流になっています。
❶ Naga Raksha
ナーガ(コブラ)の名前の通り、多数のコブラの頭巾で構成されている仮面です。肉を食べる鋭い歯と血に飢えた舌を持つ悪魔の特徴が表現されています。
↑(写真は2023年3月21日にBMICHで開催された『World Puppetry Day』イベントでの上演)
❷ Gurulu Raksha
スリランカの神話に登場する鳥グルーラ(ガルーダ)を模した仮面です。グルーラとは黄金の鷲と人間の特徴を併せ持つ生き物で、ヴィシュヌ神の乗り物とされています。
コブラ(ナーガ)に捕らえられた人を助けたことから「強靭な力と正義の象徴」とされ、蛇の敵とされています。
ガルーダがコブラの悪魔を怖がらせ、病や不幸などの元凶とされている悪魔を追い払うとされています。また、スリランカの農村では人々がコブラに噛まれて死ぬのを防ぐため、コブラの悪魔を追い払う儀式に使われます。
またスリランカの伝統舞踏の一つローカントリーダンス(ルフヌ地方を中心に発展したためルフヌダンスとも呼ばれる)でも踊られます。
↑(写真は2019年2月18日に開催された『Navan Perahera』でのグルーラマスクダンサーたち)❸Mayura Raksha
マユラ(孔雀)を模したマスクで、マスクの側面と正面に羽を広げた3羽の孔雀が表現されています。このマスクは『平和、調和、繁栄』をもたらすと信じられています。❹ Gara Raksha

邪気や悪霊を追い払うとされるこのマスクは、病気の治癒祈願の儀式や漁師による漁獲量の祈願のペラヘラ(行列)などで使われているほか、民族劇(コーラン)でも使用されています。元々悪魔と考えられていましたが、後にその功徳により神々の眷属に加わりました。
❺ Ginidal Raksha
怒りを投影し邪気を祓う火の悪魔
↑『Ariyapala & Sons』の博物館展示
このマスクは、世の中のあらゆる悪に対して怒りを投影する火を表しています。
このマスクは邪気を祓うと信じられているほか、友情と調和をもたらすとされています。
❻ Maru Raksha
2.Sanni Mask(サンニマスク)
西洋医学が出現するずっと前から、スリランカには独自の伝統医療と儀式的な治療が行われてきました。
古来スリランカの人々は、病気はさまざまな悪魔が体に侵入し、病気が引き起こされると信じていました。18の悪魔(サンニヤカ)がさまざまな病気の原因となっており、体内に侵入した悪魔を追放することで治癒すると考えられていました。
サンニヤクマ(සන්නි යකුම)として知られる儀式(踊り)は、悪霊を追い払う悪魔払いの儀式(トーウィル:තොවිල්)です。
儀式は災いを引き起こす悪魔をそれぞれ表す18のサンニマスクで構成され、18の悪魔の長であるマハコラサンニヤカがいます。
サンニの仮面はそれぞれ特定の病気を具現化したものです。
また病気とアーユルヴェーダも深いつながりがあり、アーユルヴェーダと悪魔祓いにも強い結びつきがあります。
アーユルヴェーダ医学では、すべてのものは【空気(風)、水、火、土(大地)、空間(空)】の5大要素で構成されているとされています。体質を構成するとされている3つのドーシャ【ヴァータ(Vatha)】【ピタ(Pitta)】【カパ(Kapha)】のバランスで健康が保たれるといわれています。この3つのドーシャのバランスが崩れることが、あらゆる病気の根本原因であるとも考えられています。そのため、サンニヤクマの中にはドーシャの名前に関連するものもあります。
↑『Ariyapala & Sons』の博物館展示
スリランカの伝統的舞踏の一つローカントリーダンス(ルフヌダンス)でも重要な踊りの一つとなっており、観光など鑑賞用に演じられることが多くなりましたが、現在でも、個人の病気の治癒というより、人々の生活に苦しみと混乱をもたらすと信じられている悪魔を祓うことを期待して一部の地域で行われています。
↑切手:TRADITIONAL SINHALESE EXORCISM RITUAL(2018年8月8日発行) それぞれのサンニヤカ(病気をもたらす悪霊)をかいつまんでご紹介します。上記の切手に描かれたサンニヤカと下記の面が異なるように、形態や名前が異なるサンニヤカもあります。
❶ Butha Sanniya
一時的な狂気を引き起こすとされています。
❷ Abhutha Sanniya
意識不明や失神を引き起こす原因と考えられています。
❸ Deva Sanniya
はしか、おたふくかぜ、天然痘、腸チフス、コレラ、水ぼうそうなどの伝染病は、このサンニヤカの仕業と言われていました。
これらの伝染病は致命的な疫病であったため、古代の人々はこれらの疫病は神々の仕業であると考えたといいます。そのため、このサンニヤカのお面は王冠を被っているのが特徴です。
❹ Vatha Sanniya
ヴァータ(空気)に起因する病気や麻痺を起こすサンニヤカ。古代の人々は、鼓腸や痛風などの腹部疾患はこのサンニヤカが原因であると考えられていました。
❻ Amukku Sanniya
胃痛や嘔吐を引き起こすこのサンニヤカの仮面の多くは、緑色で吐き気や痛みに苦しむ表情が表現されています。
❼ Naga Sanniya
コブラに噛まれたような体の痛みや、水ぶくれ、腫れを引き起こす。恐ろしい蛇が登場するような悪夢はこのサンニヤカの仕業と信じられており、仮面の片面には蛇の彫刻が施されています。
❽ Ginijala Sanniya
体内に熱を発生させ、灼熱感やほてりを与えるサンニヤカ。このサンニヤカは高熱と悪寒の原因であると言われていました。マラリアはこの両方の症状を持つ病気のひとつで、儀式を行うことで治癒につながると信じられていました。
このマスクの顔は、高熱を表現するために赤く塗られていることが多くあります。
❾ Selesma Sanniya
10. Kapala(Pissu) Sanniya
頭痛や一時的な狂気を引き起こすとされるサンニヤカ。
このマスクは緑色で、目元はやや躁状態で描かれます。
11.Maru Sanniya
死をもたらすといわれるサンニヤカ。
12. Kora Sanniya
顔や手足の不自由(しびれや麻痺)、関節の腫れを引き起こすとされるサンニヤカ。
13. Kana Sanniya
一時的な失明を引き起こすとされるサンニヤカ。そのためこのマスクは通常、片目または両目をつぶった姿で描かれています
14. Jala Sanniya
耐え難い寒さと震えや、コレラなどによる下痢を引き起こすとされるサンニヤカ。
15. Bihiri Sanniya
一時的な聴覚障害を引き起こすとされるサンニヤカ。
仮面の片側には蛇が彫られていますが、これは古代人が蛇を耳の聞こえない生き物とみなしたことに由来しています。
16. Golu Sanniya
一時的な失語症を引き起こすとされるサンニヤカ。口がきけなくなったり、話すことができなくなったりするのはこのサンニヤカが原因であるとされていました。
通常このマスクは、口が開いていて舌や歯がない顔で描かれています。
17. Gulua Sanniya
下痢、衰弱、腸におできの発生を引き起こす鉤虫やサナダ虫のような寄生虫によって引き起こされる病気や疾患は、このサンニヤカの仕業と信じられていました。
このお面は淡い黄色に塗られており、虫の病気による貧血に悩む患者の肌の色を表現しているとされます。
18. Demala Sanniya
伝統的には、言葉の混乱や意味不明な発話を引き起こすサンニヤカとされました。名称の「Demala」はタミル人を意味しますが、現代では差別的な解釈を避けるため別名で紹介されることもあります。
◎Maha Kola Sanniya
このサンニヤカは18のサンニヤカの長であり、全ての身体的な不調や病気の原因となっているとされています。
言い伝えによると、Visalaの王が他国に出征して戻ってきたとき、王妃は王の留守中に身ごもっていました。王は王妃に姦通の疑いをかけ処刑を命じました。しかし実は王妃は無罪で、彼女はお腹にいる息子(王子)が将来王を殺すと予言して処刑されます。処刑中に彼女はマハコラ王子と呼ばれる息子を出産しました。
産まれた王子は墓地で鬼神に育てられ、ある日母の身に何が起こったのかを告げる声を聞きます。復讐を誓った王子は蛇の毒を集め、18個のボールを作りました。そのボールを携えて王のいる宮殿に出向き、18個のボールを打ち砕きます。その際に18の病魔が生まれたといわれています。この仮面の中央は悪魔となったマハコラ王子と、左右に9つづつ、18のサンニヤカが描かれています。
↑『Ariyapala & Sons』の博物館展示
【Sanni Mask(サンニマスク)使用した代表的なサンニヤクマの儀式】
【儀式前】
儀式の前にホロスコープで出された縁起の良い日時に、寺院ならびに僧侶を参拝し、儀式が滞り行われることを祈願します。
↓
【儀式当日】
儀式を行うのに縁起の良い日時は、ホロスコープで決定されます。
日没時に患者が家の前に着席し、友人や隣人も集まり儀式が始まります。
❶カッタディヤー(කට්ටඩියා)と呼ばれる悪魔祓いの儀式を習得した呪術師(世界ではシャーマンといわれる人)ならびに、ダンサーや太鼓たたきなどのメンバーが祈りを捧げ儀式は始まります。
↑『Ariyapala & Sons』の博物館展示
❷カッタディヤーは、目の前に座る患者の苦しみの根本原因を明らかにし、太鼓の音が鳴り響く中、呪文を唱えながら踊り、悪魔を引き寄せます。
↓
❸邪悪で見るだけで人を病気にすると呼ばれる5人のヤカが登場します。
1.カルヤカ(Kalu Yaka):女性や赤ん坊に病気を引き起こすほか、性的欲望をかき立てます。
2.リリヤカ(Riri Yaka):血液に関連する病気を引き起こします。
3.マハソナ(Mahasona):墓地の大魔王とされ、人々を怖がらせ混乱に陥れます。
4.スニヤムヤカ(Suniyam Yaka):人々を麻痺させ魔術と結びつけます。
5.アヒマナヤカ(Ahimana Yaka):恐怖と精神疾患を引き起こします。
カッタディヤーは悪魔(病魔)が患者への影響を明らかにしながら、悪魔との対話をし、供物をささげることで患者から離れることを約束させます。
患者はサンニヤカの面をつけたダンサーに供物を捧げ、自分の病気を引き起こしたサンニヤカを鎮め、患者の体内から離れることを祈願します。
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❹パーリス(පාළිස්)と呼ばれる12人の仮面舞踏家がそれぞれの物を携えて入場し、儀式の場を整えます。彼らはユーモラスな動きをすることで観衆に笑いを引き起こします。笑いは、患者の治療の過程で重要な役割を果たすと信じられています。
↑『Ariyapala & Sons』の博物館展示
【12人のパーリス(පාළිස්)】
●パンダンパーリヤ:燃え盛る松明
●アングルドゥンマラパーリヤ:樹脂と炭
●カドゥパーリヤ:剣
●カラスパーリヤ:花の植えられた植木鉢
●ケンディパーリヤ:ポットに入った聖水
●サルーパーリヤ:ショール(布)
●ダルムラパーリヤ:ベテル(キンマの葉)、花、コイン
●タンビリパーリヤ:キングココナッツ
●ククルパーリヤ:鶏肉
●ドゥヌパーリヤ:弓矢
●ムグルパーリヤ:こん棒
●アスーパーリヤ:枝
↓
❺18サンニの登場。 病気の特徴を表した仮面をつけ、黒い衣装に、葉で作られた腰巻を身に着け踊りを披露します。サンニヤカとカッタディヤーの対話(踊りと呪術)で、カッターディーヤは患者に何をしたのか問いただし、サンニヤカは患者にしたことを説明し患者に供物を要求し、供物を受け取った後に患者から離れることに同意します。
3.Kolam Mask(コーラムマスク)
【仮面の製作工程】
スリランカでマスク製作に使われる木材は、主にカドゥル(Kaduru:キョウチクトウ科の木)がメインとなります。この木は切りやすく型も取りやすい上、害虫がつきにくく日光や湿気にさらされても腐りにくい特性があります。
そのほかにもRuk-aththana、Erabaduも使用されているとのことです。
燻した木片を、仮面の形状に切りだしていきます。
全て彫り終えた後はマスクを乾燥させます。乾燥後やすり※をかけて表面を滑らかにします。
※昔は、粗いやすりはタラパ(තලපත් )と呼ばれるバショウカジキ属 (Sailfish)の魚の皮、細かいやすりは表面が粗い葉が使用されていたのとことです。
その後、樹脂粉末・樹脂・粘土を混ぜたペーストを塗りさらに表面を滑らかにします。
白い塗料で下塗りをします。
ちなみに、仮面彫刻師らが娯楽のために人形を作り始め、やがて音楽家や俳優が加わり、祭りや見本市で演じるようになり、民俗芸術として確立されていったスリランカの伝統的な操り人形劇(シンハラ語でルーカダ ナータャ(රූකඩ නාට්ය)は、2018年にはユネスコの無形文化遺産保護活動の優良事例として掲載されました。



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