1954年公開の映画『巨象の道(Elephant Walk)』は、スリランカ(当時セイロン)を舞台にしたハリウッド映画です。ブリーフガーデンやラトマラーナ空港、ポロンナルワなど、実際のスリランカ各地で撮影が行われ、美しい自然や歴史的景観が作品を彩っています。
本記事では、映画のあらすじや撮影秘話とともに、実際のロケ地を詳しくご紹介します。さらに、ロケ地でもあるブリーフガーデンと、その庭園を築いたベヴィス・バワ、そして弟ジェフリー・バワとの関係についても解説します。映画ファンはもちろん、バワ建築やスリランカ旅行に興味のある方にもおすすめの内容です。
映画『巨象の道(Elephant Walk)』とは?スリランカが舞台の名作映画
🎥『Elephant Walk』(1954年公開)
🎥邦題「巨象の道」(日本公開も1954年)
映画『巨象の道』とは
1949年に出版された小説を原作とした作品。
セイロンにある「巨象の道」と呼ばれる大農園の当主ジョンと結婚したルースは、農園を任されていた技師ディックに次第に惹かれていく。
ジョンとディック、二人の男性の間で揺れ動く若妻の心の葛藤を描いた作品です。
スリランカ(当時セイロン)で行われたロケ撮影
▪ブリーフガーデン(ベールワラ)
▪ラトマラーナ空港(コロンボ)
▪ガル・ヴィハーラ、王宮跡(ポロンナルワ)など
ヴィヴィアン・リー降板とエリザベス・テイラー起用の舞台裏
スリランカ(当時はセイロン)での撮影は1953年2月から約4週間行われました。
ベールワラ、ラトマラーナ空港、ポロンナルワ、茶園、実際の紅茶工場などで撮影が行われたといわれています。
スリランカが舞台の映画だけに、劇中ではシンハラ語の歌やシンハラ語のメニュー、伝統舞踊のキャンディアンダンスなども見ることができます。
当初キャスティングされていたヴィヴィアン・リーは、スリランカでの撮影開始から数日後に精神的不調により降板しました。
その代役としてエリザベス・テイラーが起用されましたが、彼女の出演シーンはすべてアメリカのスタジオで撮影されたため、再撮影されなかった一部のロングショットにはヴィヴィアン・リーが演じた映像がそのまま使用されているそうです。
映画『巨象の道』の主なロケ地
ラトマラーナ空港(旧コロンボ国際空港)
コロンボ空港」と聞くと、多くの方はバンダラナイケ国際空港(BIA)を思い浮かべるかもしれません。
しかし、本来「コロンボ空港」とは、コロンボから約15km南に位置するラトマラーナに1935年に開港した「コロンボ国際空港(RML)」を指していました。
現在では「ラトマラーナ空港」と呼ばれていますが、空港建物には今も「COLOMBO AIRPORT」の文字が掲げられています。
ラトマラーナ空港はスリランカ初の国際空港であり、1967年にバンダラナイケ国際空港が開港するまで、国際便の発着はここで行われていました。
現在はスリランカ空軍の基地として利用されているほか、国内線やチャーター便の発着にも使用されています。また、敷地内には空軍博物館も併設されています。
映画内のシーン(左)と現在のラトマラーナ空港(右)
ブリーフガーデン(Brief Garden)
ブリーフガーデンとは?ベヴィス・バワが築いた名庭園
造園家ベヴィス・バワが生み出した庭園
西海岸のベールワラにあるブリーフガーデン。
この庭園の設計者であり、かつての居住者がベヴィス・バワ(Bevis Bawa)です。
ベヴィスは造園家であり風刺画家として知られていますが、もともとは英国総督の副官を務め、両親から受け継いだゴム農園を経営するかたわら、自宅周辺の整備を進めてブリーフガーデンを作り上げました。
やがて彼の庭園は国内外で評判となり、多くの人が訪れるようになるとともに、各国大使館や公共施設、個人邸宅の造園も手がけるようになりました。
ジェフリー・バワ誕生の原点となったブリーフガーデン
兄ベヴィス・バワが弟ジェフリー・バワに与えた影響
スリランカを代表する建築家ジェフリー・バワには、10歳年上の兄がいました。
その兄こそがベヴィス・バワです。
ジェフリー・バワの建築を語るうえで、兄ベヴィスの影響は欠かせません。
海外を拠点に弁護士として働いていたジェフリー・バワは、29歳の頃にイタリアへの移住を考えていましたが、計画が思うように進まず、すべてを整理してスリランカへ戻りました。
当時、自宅を持っていなかったバワは、しばらく兄の住むブリーフガーデンで暮らしていました。
ルヌガンガ誕生へとつながる転機
兄の勧めもあり、スリランカに腰を据えることを決意したバワは、ベントタにあるバンガロー付きのゴム農園を購入し、「ルヌガンガ」と名付けて庭園の整備と建物の改修に取りかかります。
豊かな構想やアイデアを持ちながらも、それを具体化する専門知識の不足を痛感したバワは建築を学び始め、やがて建築家としての道を歩むことになります。
ラキ・セナナヤケやエナ・デ・シルバとの芸術ネットワーク
画家で彫刻家のラキ・セナナヤケ、バティック作家のエナ・デ・シルバ、テキスタイルデザイナーのバーバラ・サンソーニ、画家のドナルド・フレンドなど、後にバワ建築を支える芸術家たちも、もともとは兄ベヴィスと交流のあった人々でした。
バワ建築巡りと組み合わせたい観光スポット
映画『巨象の道(Elephant Walk)』は、スリランカの豊かな自然や歴史ある景観を世界に紹介した代表的な作品の一つです。ロケ地となったブリーフガーデンは、映画の舞台であるだけでなく、ジェフリー・バワが建築家として歩み始めるきっかけとなった特別な場所でもあります。
映画のロケ地を巡る旅は、美しい風景を楽しむだけでなく、スリランカの建築や庭園文化、芸術の歴史にも触れられる貴重な体験です。バワ建築やルヌガンガ、ベントタ周辺を訪れる際には、ぜひブリーフガーデンにも足を運び、映画と建築が交差するスリランカならではの魅力を体感してみてください。
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