スリランカは4/14に新年を迎えます。
ニュースでも報じられている通り、現在スリランカは経済危機に陥っており、ガス不足、輸入停滞による食料不足や高騰、燃料や水不足による計画停電など、困難ならびに混乱の様子がニュースで報じられている一方、各商業施設は新年に向けてのセールやクレジットカードオファーを出しているため、各商業店舗は新年のための新しい服や物、贈り物などで買い物かごをいっぱいにした多くの買い物客でにぎわっているのも、まぎれもない現在のスリランカなのです。
ところで、4月が正月?と不思議に思った方もいるかと思います。
古来スリランカでは、太陽が地球と一直線に並ぶ日(春の始まりを意味する春分の日)に祝い事が行われてきました。最も太陽が高い位置にある春分の時期は最も太陽の恵みを受けるとされ、もとは新年というのは太陽によりもたらされる自然の恵みに感謝する祝い事でした。
そして、太陽が星座(黄道12宮)に沿って一巡したこの日が暦年の始まりとされ「新年」として祝われるようになったようです。
新年の時刻やそれぞれに適した吉兆時間(ネカタ:Auspicious Time)、方角や色はホロスコープ(占星術)によって決められます。
2022年のシンハラ正月(正確にはシンハラ並びにタミル※の新年)のネカタ(Auspicious Time)も発表されました。※ヒンズー教タミル
なお下で紹介するのはシンハラ正月ですので、タミル(ヒンズー)式は異なる部分がございます。下記で、一部ヒンズー教タミルの新年の用意もご紹介しています。
●新年(アルットゥ アウルドゥ ウダーワ):4月14日 午前8時41分
新年の始まりとなります。多くの家庭でこの時間に爆竹が鳴らされ新年を祝います。
新年が近くなると、路上で爆竹などを売る店が並びます。
●かまど(台所)の使い初め(アーハーラ ピシーマ):4月14日 午前9時5分
かまどに火をつける時間です。
といっても多くの家庭では台所ではなく、居間や庭先などに鉄板を敷いてその上に小さな七輪を置いて行うことが多くなっています。下記のように、七輪と素焼きの壺、薪も含めたセットも販売されています。
新品の素焼きの器にはココナツミルクを入れて沸騰させます。噴きこぼれ方でその年の運勢を見ます。今年は金色の衣装で東の方角を見ながら点火すると良いとされています。
ミルクの沸騰(ミルクがあふれ出る)様子は豊穣を表しているといわれているため、勢いよくきれいに噴きこぼれると幸先が良いとされます。
このココナツミルクを使って、新年最初に作る料理はキリバット(炊いたご飯をココナツミルクで炊きなおしたもの)です。
●新年の儀式:4月14日 午前10時17分
新年の最初の食事(アーハーラ アヌバワヤ)となります。
たいてい母親(もしくは家長)が皆にキリバットを食べさせる(結婚式のケーキバイトをご想像ください)ところから始まり、ブラッドの葉にお金を包んだものを渡しあい、目上の方(母親や父親)にぬかずいて挨拶をしたり、家族同士で新年の挨拶をしあいます(ガヌデヌ キリ―マ)。
このココナツミルクを使って、新年最初に作る料理はキリバット(炊いたご飯をココナツミルクで炊きなおしたもの)です。
●新年の儀式:4月14日 午前10時17分
新年の最初の食事(アーハーラ アヌバワヤ)となります。
たいてい母親(もしくは家長)が皆にキリバットを食べさせる(結婚式のケーキバイトをご想像ください)ところから始まり、ブラッドの葉にお金を包んだものを渡しあい、目上の方(母親や父親)にぬかずいて挨拶をしたり、家族同士で新年の挨拶をしあいます(ガヌデヌ キリ―マ)。
このブラッドは日本ではキンマと呼ばれるつる性の植物で、ハート形の光沢のある葉が特徴です。豊かさや繁栄の象徴とされており、スリランカでは慶事に欠かせないものです(この葉にプワックの実を混ぜ合わせて噛みタバコとしても用いられています)。
その次は、それぞれの本業に関連のある動作(ワダ アッリーマ)をします。例えば学生ならば教科書を開いたり、仕事をしている人は仕事関連のものを動かす(畑仕事や、パソコン、ミシン掛け)などをして、仕事や学業が順調に行く事を祈願します。
○プンニャカーラヤ(ノナガタヤ):4月14日午前2時17分~4月14日午後15時05分
聞きなれない言葉だと思いますが、プンニャカーラヤ(ノナガタヤ)は旧年が終わり、新年が始まるまでの一時的な空白期間のことを指します。
新年は、太陽が魚座から牡羊座に移動したときが暦年の始まりとされ「新年」となります。つまり、魚座から牡羊座に移動中でどちらの星座にも属していない時間を『プンニャカーラヤ(ノナガタヤ)』といいます。
この時間に何かを生産する行為(仕事=利益を生産、料理=食を生産など)するのはよくないといわれています。
そのため、この時間帯の前までに仕事や料理を済ませ、かまどの火を消さなければなりません(新年に食べるご飯などはこの時間前までに作らなければなりません。今年は4/14の2:17分前に食事の支度を終える必要があります。そこから新年の時間を迎えるまでは、かまどやコンロに火をつけないようにしないといけません。この時間は仕事も食事もやめ、静かに家で過ごしたり寺院に出向いたりして過ごします。
『FESTIVAL OF THE SUN GOD』(Sumitha出版)より転載(※日本語は追記)
他にも
健康を願い頭にオイルを塗る儀式(ヒサテル ゲーマ):4月17日午前7時04分・南の方角・赤と黄を混ぜた色(銅色)の衣装や、新年最初の仕事のために家を出る吉兆時間(レキラクシャ サンダハ ピタットワヤーマ):4月18日午前6時51分・南の方角・白い衣装などがありますが、ここまでやる家庭は少なくなっています。
<新聞イラストで見る「新年」を象徴するものとシンハラ・タミル新年の違い>
多くのイラストなどはシンハラ式の正月の様子のイラストが多いですが、新聞記事などに使われるイラストには公立性を持たせるためにシンハラ式、タミル(ヒンズー式)両方のイラストが描かれています(向かって左のテーブルがシンハラ式、右がヒンズー式)。
左のシンハラ女性はルンギ(チェーッタ)と呼ばれる巻きスカートをはいています。これはサリーがインドより伝わる前のスリランカの伝統的な女性の衣装でした。
右のタミル女性はサリーを着て、額にビンディをつけています。
シンハラ側には仏教寺院の仏塔(②)が、ヒンズー側にはヒンズー寺院(コーヴィル⑥)が描かれています。
新年のテーブルセッティングも、左のシンハラ式には上記で紹介したキリバットやコキス、キャウンなどのお菓子が見られます(④)。右のヒンズー側には、ヒンズー教の慶事で使われるカラッシュ(銅製の壺)にマンゴーの葉、ココナツとジャスミンの花で装飾されています(⑤)。
まずイラストで必ず描かれるのは「太陽」。上記で紹介したように、もとは新年というのは太陽と、太陽によりもたらされる自然の恵みに感謝する祝い事でした。そのため③のように収穫物(特に主食である稲)も描かれています。
またブランコも描かれていますがブランコ遊びは太陽神に捧げる遊びで、ブランコの上下(揺れ)はそれぞれ日の出と日の入りを表しています。
①はErabadu(Erythrina fusca)と呼ばれるマメ科の花です。日本でしられるデイゴと同じ属です。日本のように四季がはっきりしていないスリランカでは、果物の時期や植物の開花などでも暦をよんでいました。Erabaduはちょうど新年の時期に咲く花なので、新年を象徴する花として描かれています。⑦は上記でも説明したブラット(キンマ)の葉です。
≪グリーティングカードでみる新年のシンボル≫
上記で紹介したもの以外に、グリーティングカードや新年の記事の挿絵などに描かれる下記のようなシンボルもあります。
Aはカシューの果実と葉です。実の先端にある勾玉状のものがカシューナッツです。カシューは、元はスリランカにはなく(ブラジル原産)、16世紀にポルトガル人の船員によって持ち込まれた植物ですが、3~4月に結実期を迎えることから、こちらも新年のシンボルとなっています。
BとCで牡羊座と魚座のシンボルマークが描かれているのは、太陽が魚座から牡羊座に移動したときが新年とされているためです。
Dはシンハラ語でコハと呼ばれるオニカッコウ(Asian Koel)です。オニカッコウがちょうど新年の前ごろから繁殖期を迎え、オスは遠くまで響くくらいの甲高い声でさえずります。
そのため、この鳴き声が聞こえてくると新年が近いとされ「新年を呼ぶ鳥」としてのシンボルとされています。ちなみにオスは全身がカラスのように黒色をしていますが、メスはごま塩のように白黒のまだら模様をしています。
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