コロンボ中心部のジェフリー・バワ建築・見学スポット【後編】
前の記事『🔗コロンボ バワスポット(前編)』に続いて、下記の「🔗In Search of Bawa: Master Architect of Sri Lanka (著:David Robson, 写真:Sebastian Posingis)」で紹介されているコロンボ市内の建築物24件を、実際に撮影した写真とともに紹介します。
コロンボ中心部のバワ建築マップと見学前のポイント

↑Map 1-Bawa's Projects in Central Colombo[In Search of Bawa: Master Architect of Sri Lanka ]より転載
『In Search of Bawa』掲載24件の建築物について
❶~⓱はほぼ原形のまま現存している建物(塗り替えを除く)、A~Cは改築などによりバワが設計した当初から大きく変更されている建物、a~eは改修工事や修復工事が必要で、将来的に失われるリスクがあるバワ建築(著者執筆当時)として分類されています。
建物の公開状況・見学可否一覧
最初の名称は建築当時の名前、矢印の後は現在の名称です。年代については文献によって異なる場合もありますが、本記事では上記書籍の記載に従っています。ホテルやカフェなど公式サイトのある施設には、施設名にリンクを付けています。
❿ The Seema Malaka(1976年)|バワ唯一の仏教建築として知られる湖上寺院
📝参拝可能(外国人は有料)バワ唯一の仏教建築で、コロンボのべイラ湖上にあります。
近くにあるガンガーラーマ寺院の分院で、僧侶となるための出家の儀式(得度)を行う場所として建てられました。
寺院は3つに分かれた土台からなっています。
中央の講堂(説法を行う場所)は、四角形の枠組みに巨大な梁で構成され、スリランカの伝統的東屋(アンバラマ)を模したと言われています。
側面は、垂木を傾斜させて隙間を開けて組んでおり、この構造は講堂内に熱がこもるのを防ぎ、常に風が通り抜けるよう工夫されています。この造りは、バワがルヌガンガで建てた鶏小屋からも着想を得ており、1979年建築(1982年完成)の新国会議事堂のデザインにも繋がっていきます。
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講堂から伸びた小さな島には、得度式を行うパビリオン(御堂)があります。
反対側の島には菩提と仏塔が配置され、四隅にはヒンドゥー教のカタラガマ神、サマン神、ナータ神、パッティニ神を祀ったデーワーレ(祠)があります。.jpg)
寺院の彫像選びにはバワは関与せず、全てが寺院の裁量によって決められたといいます。
寺院はバワの設計初から多くの変更がされており、元は赤瓦で二重勾配であった屋根も、現在の青い艶出し瓦に置き換えられています。
講堂の周囲にはタイから寄贈された青銅の仏像が追加されました。そのほか、仏像や楽像、立像など多くの像が追加されています。講堂へ向かう桟橋にも、現在は像を安置するための堂が設けられており、湖岸側から講堂の正面全体を見ることはできなくなっています。さらには、菩提樹と仏塔のある島も拡張・増築されています。

↑平面図はIn Search of Bawa: Master Architect of Sri Lanka (著:David Robson, 写真:Sebastian Posingis)より転載
⓫ The Jayakody House(1991-1996年)|バワ晩年に手がけたコロンボ最後の住宅作品
📝一般住宅ですが、道路に面しているため外観観覧可能施主はプレマダーサ第2代大統領の娘の夫、ロハン・ジャヤコディ氏。



コロンボという市街地の住宅のため、防犯並びにプライバシー確保の為に壁が高く作られており、中が窺い知れないようになっていますが、通りから見える鳥籠のような螺旋階段が目を惹きます。

⓬The State Mortage Bank/Mahaweli Authority of Sri Lanka(1976-1978年)|自然換気を実現した先進的なオフィスビル
📝関係者以外立ち入り禁止ですが、道路に面しているため外観観覧可能(内覧はアポイントが必要)真上から見ると歪な多角形の12階建のこの建物は、見る角度によって形状や幅が異なって見
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この建物は「自然換気が可能なオフィスビル」に重点を置いて設計されました。
日射熱の流入を抑えながらも風を取り入れる工夫がされており、自然の採光も得られる作りとなっています。
↑断面図(2022年開催のバワの展覧会『It is Essential to be There』会場にて撮影)
(📝参考)
『🔗バワの原点を知る手紙から幻のホテルまで...ジェフリーバワ展覧会『It is Essential to be There』(前編)』
『🔗バワの原点を知る手紙から幻のホテルまで...ジェフリーバワ展覧会『It is Essential to be There』(後編)』
このオフィスビルは、生物気候学的な設計を取り入れた高層建築の先駆的事例として高く評価されていますが、現在では空調が取り付けられ内部はかなり改修されているとのことですが建物自体はほぼ設計当時のままです。
⓭ The Raffel House(1962-1964年)|初期バワ建築の特徴を残す都市住宅
📝一般住宅:未見⓮ The David Spenser House(1997年)
📝一般住宅:未見⓯ St Bridget's Montessori(1963-1964年)|気候に合わせた学校建築の代表作
📝学校のため、関係者以外立ち入り禁止(内覧はアポイントが必要)
⓰ The Agrarian Research and Training Institute(1973-1976年)|低予算で実現したトロピカルモダニズムの傑作
📝関係者以外立ち入り禁止(内覧はアポイントが必要)ですが、2022年10月に🔗Open House Colombo※で限定公開されました(※Open House Colomboは、バワ財団(Geoffrey Bawa Trust)がオーガナイザーとなり、スリランカの現代建築を代表する建築事務所や建築家が手がけた建築物を公開するプログラムを定期的開催しています。)
この調査・研修所の設計をスリランカ政府から依頼された 1970年代は、スリランカの緊縮財政による輸入規制で鉄筋やガラスが不足していた時代背景があり、さらには非常に限られた予算での依頼でした。
建物は中庭を中心に設計され、一見するとシンメトリーな印象を受けますが、実際に歩いてみると異なっていることがわかります。
屋根はセメント板と瓦、梁や手すりなどにはココナツなどの木材、床は磨き艶出しされたテラコッタのタイルと、スリランカで手に入る素材が使われているため、外観はスリランカらしい伝統家屋に見えながらも、廊下の柱の間隔や、丸みを帯びた開口部にデザイン性の高さを感じさせます。
さらには、ラティスが日差しの軽減と通気性確保、さらには目隠しの役割を果たしていたり、雨樋や屋根の下に溝を設けた排水対策などとても機能的な設計となっています。
⓱ The Ratnasivaratnam House (1979年) ⇒Jetwing Ratnam Residence|2025年に宿泊施設として生まれ変わったバワ邸宅
📝宿泊可能2026年6月追記)1979年にバワが実業家ラトナ シヴァラトナム一家のために設計した邸宅です。長らく私邸として使用されてきましたが、2024年初頭に売却され、Jetwing Hotelsが取得。最小限の改修を施したうえで、2025年7月より全4室のブティックヴィラとして一般客の受け入れを開始しました。
建物は、屋内と屋外の境界を曖昧にし、建築と自然を一体化させるバワの「トロピカルモダニズム」を体現しています。
館内に足を踏み入れると、まず広々としたダイニングとラウンジエリアが広がります。そして、どこにいても視界に入るのが豊かな緑の植栽です。吹き抜け状に開放された屋根部分からは植物の根が垂れ下がり、木々の幹は木製の梁を貫くように伸びています。高い天井とふんだんに用いられたガラスによって、木漏れ日と緑が空間の主役となり、家全体に開放感をもたらしています。まるで自然の中に身を置いているかのような感覚を味わえる空間です。

客室も含めた詳細は、下記の投稿記事を御覧ください。
「🔗コロンボで泊まれる4軒目のバワ建築『Jetwing Ratnam Residence』」
a. The Keuneman House (1967年)|狭小敷地を活かした都市型住宅
📝一般住宅ですが、通りに面しているため外観観覧可能(但し、植栽で見える部分は限定的)中は見えませんが、1階はカーポートと事務所、2階には台所や寝室、3階には窓や壁のないリビングと屋根なしのテラスが設けられていたとのことです。
b. Classroom Block for Bishop's College (1960-1963年)|通風と採光を追求した校舎建築
📝学校のため、関係者以外立ち入り禁止(内覧はアポイントが必要)c. Two Classroom Blocks for St Thomas'Prep School(1958-1960年)|海風を取り込むために設計された学校建築
📝関係者以外立ち入り禁止ですが、道路に面しているため外観観覧可能(内覧はアポイントが必要)二棟に別れた校舎のうち後方の校舎は海に平行に建てられ、手前の校舎は後方の校舎に対して直角に建てられています。
後方の校舎は1、2階が教室で3階が集会などができるホールになっており、建築当初は窓はなく、壁面のブロックを格子状にして通気性と日除けを確保したといいますが、モンスーンの時期には海側から雨水が吹き込む為、後にガラスと石組みの構造に変えられたとのこと。
↑建物模型(2022年開催のバワの展覧会『It is Essential to be There』会場にて撮影)
手前の校舎は奥行きのある梁と二階部を取り囲むベランダが特徴で、建築当初はアニル・ジャヤスーリヤ(バティック画家のエナデシルバの息子)による彫刻(コンクリートで型抜きしたもの)で装飾されていました。
d. Automobile Association Office(1959-1960年)|街中に残る初期のオフィス建築
📝関係者以外立ち入り禁止(内覧はアポイントが必要)。通りからは一部しか見えず。e. Druvi de Saram Houses(1987-1994年)⇒De Saram House |中庭を中心に5棟をつないだ名作住宅
📝宿泊、見学(ガイドツアー)可能<見学概要>※事前予約必須
料金: LKR 2000(外国人)、LKR 1000(ローカル、居住ビザ所有)予約先メール: admin@geoffreybawa.org
Druvi デ・サラムは、Robert de Saramの4人の子供の1人でピアニストです。
この家は、元はドゥルヴィの両親が所有していた家と敷地でしたが、Druviが譲り受け4人家族の住居として1986年にバワに改築を依頼しました。バワは、ドゥルヴィの両親が住んでいた家も含めて改造し、さらには外壁と古いガレージの間を連結させ、そこにも部屋を造り全体に1つの家の空間としました。
この家は、中庭を中心に5つの棟からなります。
このDruvi de Saram Houseは半屋外にあるリビングスペースなど内と外の境界線が曖昧なバワらしい設計となっています。Druviデサラム一家がイギリスに移住後は空き家となっていましたが、バワ生誕100周年記念事業の一環として、2019年4月にバワ財団がこの家の管理と修理を引き継ぎ、宿泊施設として4室に宿泊できるようになっています。
改修にあたっては、バワ氏の弟子である建築家のAmila De Melが監督しました。
修復の一環として、バワの美術コレクションとデ・サラム家の美術コレクションの保存と展示も行われています。これらの作品には20世紀のスリランカ美術の発展の原動力となった美術家集団43グループの作品もあり、スリランカの美術史を語る上でも貴重な作品が展示されています。
「🔗デサラムハウス(De Saram House) ルーム紹介」
A. The de Saram Row Houses(1970年)|都市住宅の可能性を探った長屋プロジェクト
📝一般住宅ですが、道路に面しているため外観観覧可能デサラム一族の一人Robert de SaramとMirian Pieris Deraniyagala夫妻はバワの古い友人であり、1970年には4人の子供(Niloo, Rohan, S.Ajith, Druvi)のために住宅の設計を依頼しました。
バワは3棟4戸からなる長屋を設計しました。


↑日本語版もあります
玄関はそれぞれ別としながら、内部は廊下でつながっています。
外の窓枠や戸枠をそれぞれ別な色で囲い、同じ建物ながら別軒であるように見せています。
敷地が限られた都市の環境に合わせて、中庭を内部に設けたり内部を廊下で繋いだり、都市住宅の実験的試みがされましたが、音や騒音が響きやすいといったマイナス面もあったといわれます。
B. The Fernando and Martenstyn Houses(1963,1978年)⇒The Tower by Geoffrey Bawa (Martenstyn House部分)|狭小地に建つ3階建てタワーハウス
📝宿泊可能
↑The Tower by Geoffrey Bawa公式ページより転載
↑上記図はBawa Complete Works(David Robson著)より。
1階に台所とダイニングルーム、2階にリビングルーム、3階に寝室を配置し、その上に屋上テラスを設けた構造で、当時は簡素ながら革新的な建物だったといいます。
C. The National Institute of Management Studies(1975年)⇒National Institute of Business Management|現在も利用されるバワ設計の教育施設
📝関係者以外立ち入り禁止(内覧はアポイントが必要):未見コロンボ中心部のバワ建築を巡るなら知っておきたいスポット
以上が、本書に掲載されているコロンボ市内の24件の建築物の紹介です。前編でも触れたようにバワが手掛けた建物はコロンボ市内だけでも60件以上(バワが在籍していた建築事務所として手がけた案件も含む)にのぼるため、「🔗In Search of Bawa: Master Architect of Sri Lanka (著:David Robson, 写真:Sebastian Posingis)」に掲載が無い建物もあります。The Bawa Space(旧Kannangara House)
まとめ
今回紹介した建物の中には、宿泊できる建築(Jetwing Ratnam Residence、De Saram House、The Tower by Geoffrey Bawa)や、外観を自由に見学できる建物、事前予約で内部を見学できる施設などがあり、建築好きなら何日滞在しても飽きないほど見どころが豊富です。
なお、本記事で紹介した24件は、書籍『🔗In Search of Bawa: Master Architect of Sri Lanka』に掲載されている建築物ですが、実際にはコロンボ市内だけでも60件以上(バワが所属していた建築事務所として手がけた案件を含む)のバワ建築が現存しています。そのため、現在のバワ財団の拠点「The Bawa Space」など、本書には掲載されていない建築も数多く存在します。
コロンボ市内のバワ建築巡りを計画している方は、ぜひ前編の記事とあわせて、建築散策の参考にしてみてください。
📝ジェフリー・バワ関連記事🔗ジェフリー・バワ建築巡礼ポータル(バワ建築旅行の完全ガイド)
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原書(英語版)
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In Search of Bawa: Master Architect of Sri Lanka
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