シンハラ・タミル新年(Sinhala and Tamil New Year)とは
スリランカでは毎年4月中旬に新年を迎えます。正式には「シンハラ・タミル※新年(Sinhala and Tamil New Year)」と呼ばれています。。
「4月が正月?」と不思議に思った方もいるかもしれません。※ヒンズー教タミル
なぜスリランカの新年は4月なのか
古来スリランカでは、太陰暦の「බක් මාසය(バク・マーサヤ)=4月」に祝い事が行われてきました。「බක්(バク)」という用語は、サンスクリット語の「Bhāgya(バギャ=幸運)」に由来するとされています。
太陽の運行と農耕文化から生まれた新年
4月は太陽の力が最も強い季節と考えられ、豊かな実りをもたらす太陽への感謝を表す行事として発展しました。もともとは太陽によってもたらされる自然の恵みに感謝する祝い事でした。
太陽が星座(黄道十二宮)に沿って一巡し、魚座から牡羊座へ移動するこの日が暦年の始まりとされ、「新年」として祝われるようになったといわれています。
家族や地域の絆を深める一年で最も大切な祝祭
新年は、もともと村などの農村コミュニティにとって重要な祝祭であり、新年に関する習慣や儀式は村の生活に深く根付いています。
この行事は団結や文化的豊かさ、そして家族の結束を強める大切な意味を持っています。なお、新年の運動会については下記の記事をご覧ください。
吉兆時間(ネカタ)とは
新年の時刻や儀式に適した吉兆時間(ネカタ:Auspicious Time)、方角や色は、国家占星術師委員会(State Astrologers’ Committee)のメンバーによるホロスコープ(占星術)によって決められ、スリランカ文化省(Department of Cultural Affairs)から正式に発表されます。
2026年シンハラ・タミル新年の日程と吉兆時間(ネカタ)
なお、下記はシンハラ式の新年です。タミル(ヒンズー)式では一部異なる点があります。
また、タミル式も含めた伝統的風習については、以下の記事をご覧ください。
●新年(アルットゥ アウルドゥ ウダーワ):4月14日 午前9時32分
(※日本時間4/14-13:02)
新年の始まりです。多くの家庭でこの時間に爆竹を鳴らして祝います。
かつては寺院の鐘や太鼓で吉兆時間を知らせていましたが、近年では爆竹で新年の到来を祝う光景が一般的になっています。
『FESTIVAL OF THE SUN GOD』(Sumitha出版)より
新年が近づくと、爆竹を売る露店が並びます↓
吉兆時間を知らせる役割を持つ爆竹ですが、毎年事故も報告されています。また、その音に驚いた飼い犬や猫、野生動物がパニックに陥ったり、抱卵中や育雛中の鳥が巣を放棄する恐れもあるため、動物愛護団体を中心に使用を控えるよう呼びかけも行われています。
●かまど(台所)の使い初め(アーハーラ ピシーマ):4月14日 午前10時51分
(※日本時間4/14-14:21)
かまどに火を入れる儀式です。
現在では台所ではなく、居間や庭先に鉄板を敷き、その上に七輪を置いて行う家庭も多くなっています。七輪や素焼きの壺、薪などをセットにしたものも販売されています。
新品の素焼きの器にココナツミルクを入れて沸騰させ、その噴きこぼれ方でその年の運勢を占います。
2026年は、赤色の衣装を身に着け、南の方角を向いて点火するとよいとされています。
ミルクが勢いよくあふれ出る様子は豊穣の象徴とされ、きれいに噴きこぼれるほど縁起がよいとされます。
このミルクで作る新年最初の料理が「キリバット」です。炊き上がったご飯を盆に広げ、冷めたら菱形や四角に切り分けます。
●新年の儀式(アーハーラアヌバワヤ/ガヌデヌキリーマ/ワダアッリーマ):4月14日 午後12時6分
(※日本時間4/14-15:36)
『FESTIVAL OF THE SUN GOD』(Sumitha出版)より
新年最初の食事(アーハーラ・アヌバワヤ)です。
通常は母親や家長が家族にキリバットを食べさせるところから始まります。
その後、キンマ(ベテルリーフ/Bulath)の葉にお金を包んだものを渡し合い、目上の人に敬意を示して挨拶を交わします(ガヌデヌ・キリーマ)。
この儀式は、年長者を敬い、祝福を受ける意味を持ちます。また、親戚や友人と贈り物や挨拶を交わし、関係を新たにする大切な機会でもあります。
キリバットなどとともに食卓に並べられる伝統菓子については、下記の記事をご覧ください。
↑『Betel Leaf - A symbol of fortune and prosperity(Daily Mirror-11 April 2017)』より転載
キンマ(ブラット)が縁起物とされる理由
この「ブラット(Bulath)」は、日本ではキンマ(ベテル)と呼ばれるコショウ科のつる植物で、ハート形の光沢のある葉が特徴です。豊かさや繁栄の象徴とされており、スリランカでは慶事に欠かせないものです(この葉にプワックの実を混ぜ合わせて噛みタバコとしても用いられています)。
その後、それぞれの本業に関する動作(ワダ・アッリーマ)を行います。
学生は教科書を開き、働いている人は仕事道具に触れることで、1年の成功を祈願します。
また、ジャックフルーツの枝を叩いて乳白色の樹液を出す風習もあり、この樹液を見ると幸運が訪れると信じられています。
『FESTIVAL OF THE SUN GOD』(Sumitha出版)より(※日本語は追記)
○プンニャカーラヤ(ノナガタヤ):4月14日午前3時8分~4月14日午後3時56分(※日本時間4/14-6:38~19:26)
プンニャカーラヤ(ノナガタヤ)とは
旧年と新年の間にある特別な時間
プンニャカーラヤ(ノナガタヤ)は旧年と新年の間にある「どちらにも属さない時間帯」です。
新年は太陽が魚座から牡羊座へ移る瞬間を境として始まると考えられています。そのため、その移行期間は旧年にも新年にも属さない特別な時間とされ、「プンニャカーラヤ(ノナガタヤ)」と呼ばれています。
『FESTIVAL OF THE SUN GOD』(Sumitha出版)より(※日本語は追記)
この時間に避けるべきこと
新年までのプンニャカーラヤの時間(今年は4月14日午前3時8分~4月14日午後3時56分)に何かを生産する行為(仕事=利益を生産、料理=食を生産など)するのはよくないといわれています。この時間は儀式に専念する時間でもあります。
この期間は仕事や料理など「生産行為」を避け、儀式や静かな時間を過ごすことが望ましいとされています。
そのため、この時間までに料理や仕事を終え、火を消しておく必要があります。新年のかまどの使い始めや新年の儀式のための食事もこの時間前に準備しておく必要があります。
『FESTIVAL OF THE SUN GOD』(Sumitha出版)より
健康と長寿を願って頭に薬用オイルを塗る儀式※:4月15日午前6時55分・東の方角・緑色の衣装
※通常新年の儀式は各家庭内で行われることが多いですが、
ヒサテル ゲーマは伝統的にその地域の長老や寺院の僧侶が行うことになっています。そのため村や町の寺院がこの儀式を主催することも多くあります。

『FESTIVAL OF THE SUN GOD』(Sumitha出版)より
新年最初の仕事のために家を出る吉兆時間(レキラクシャ サンダハ ピタットワヤーマ):4月20日午前6時27分・南の方角・白色の衣装です。本来の仕事始めの吉兆時間は4月20日ですが、近年はそこまで長期間休暇を取ることが難しい人も多いため、2026年は4月17日に「やむを得ず仕事に出る人向け」の吉兆時間も設定されています。このどうしても仕事に出なければならない人用の吉兆時間(ハディシ ラジャカーリ サンダハ ピタットワヤーマ)は4月17日午前5時38分・金色の衣装を着てキリバット(ココナツミルクライス)を食べて家を出ると良いと書かれています。なお、近年は仕事初めの時間まで守る家庭は少なくなっています。
シンハラ・タミル新年を象徴する花・果物・鳥
スリランカでは季節の変化は穏やかですが、果物の収穫や植物の開花によって季節を感じ取ってきました。
新年の時期には、エラバドゥ(Erythrina fusca)の花が咲き、マンゴーやランブータン、カシューナッツ、ジャックフルーツなどが旬を迎えます。
また、オニカッコウ(Asian Koel)が繁殖期に入り、その鳴き声が新年の訪れを知らせるとされています。
これらは新年の象徴として、挿絵や装飾、グリーティングカードなどに描かれます。
カシュー
Aはカシューの果実と葉です。実の先端にある勾玉状の部分がカシューナッツです。カシューはブラジル原産で、16世紀頃にポルトガル人によってスリランカへ持ち込まれたとされています。3~4月に結実期を迎えることから、これも新年のシンボルとなっています。
牡羊座と魚座
BとCに牡羊座と魚座のシンボルマークが描かれているのは、太陽が魚座から牡羊座へ移動する時が新年とされているためです。
新年を告げる鳥「オニカッコウ(Asian Koel)」
Dはシンハラ語でコハと呼ばれるオニカッコウ(Asian Koel)です。オニカッコウはちょうど新年前後に繁殖期を迎え、オスは遠くまで響く特徴的な鳴き声で知られています。そのため、この鳴き声が聞こえてくると新年が近いとされ、「新年を呼ぶ鳥」としてシンボルとされています。ちなみに、オスは全身がカラスのように黒色をしていますが、メスはごま塩のような白黒のまだら模様をしています。
イラストで見るシンハラ式とタミル式新年の違い
上記のイラストは、新聞記事などで見かける新年のイラストです。多くの場合、シンハラ式の正月の様子が描かれていますが、新聞記事などに使用されるイラストでは、公平性を持たせるため、シンハラ式とタミル(ヒンズー式)の両方が描かれています(向かって左のテーブルがシンハラ式、右がヒンズー式)。
服装・祭壇・供え物の違い
左のシンハラ女性は、レッダ・ハッテを簡略化した伝統衣装、あるいはルンギ(チェーッタ)と呼ばれる巻きスカートを着用しています。これは、サリーがインドから伝わる以前のスリランカにおける伝統的な女性の衣装です。右のタミル女性はサリーを着用し、額にビンディをつけています。
シンハラ側には仏教寺院の仏塔(②)が、ヒンズー側にはヒンズー寺院(コーヴィル⑥)が描かれています。新年のテーブルセッティングも異なり、左のシンハラ式には、先に紹介したキリバットやコキス、キャウンなどのお菓子が見られます(④)。一方、右のヒンズー側には、ヒンズー教の慶事で用いられるカラッシュ(銅製の壺)に、マンゴーの葉やココナツ、ジャスミンの花が飾られています(⑤)。
太陽・収穫・ブランコが描かれる理由
また、イラストには必ず「太陽」が描かれます。もともと新年とは、太陽と、太陽によってもたらされる自然の恵みに感謝する行事でした。そのため、③のように収穫物(特に主食である稲)も描かれています。
さらに、ブランコも描かれていますが、ブランコ遊びは古くから新年の娯楽として親しまれており、太陽の運行との関連から太陽神に捧げる遊びともされ、その上下の動き(揺れ)はそれぞれ日の出と日の入りを表しています。
①は、前述のErabadu(Erythrina fusca)と呼ばれるマメ科の花です。Erabaduはちょうど新年の時期に咲くため、新年を象徴する花として描かれています。⑦は、同じく前述のブラット(キンマ)の葉です。
まとめ
スリランカのシンハラ・タミル新年は、単なる「お正月」ではなく、太陽の運行や自然の恵みに感謝し、家族や地域との絆を深める伝統行事です。
また、新年を彩る花や果物、鳥、伝統衣装や儀式には、それぞれ意味が込められており、スリランカの文化や価値観を知るうえでも大変興味深いものばかりです。
旅行でこの時期にスリランカを訪れる方はもちろん、現地の文化に興味がある方も、シンハラ・タミル新年を知ることで、スリランカをより深く理解できるでしょう。
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