デルフト島とは?スリランカ北部に残る歴史と自然の島
デルフト島は、ジャフナ半島の南西に位置するパーク海峡(Palk Strait)に浮かぶ島です。
ジャフナから南西へ向かい、クリカドバン(Kurikadduwan/KKD)港からフェリーで約1時間。長さ約8km、最大幅約6km、面積約50km²の島で、石灰岩やサンゴが広く見られる独特の景観が広がっています。
デルフト島はスリランカの乾燥地帯(Dry Zone)に位置し、平均年間降水量は約750mm。特に乾季にあたる2月から9月頃は暑く乾燥した気候となり、青い空とカラッとした空気が、スリランカ本島とは異なる印象を与えてくれます。
歴史が表すデルフト島の由来
17世紀半ば、オランダ東インド会社(VOC)がポルトガルからジャフナを奪取すると、当時のセイロン総督だったライククロフ・ファン・フーンス(Rijcklof van Goens)は、ジャフナ半島西側のパーク海峡に浮かぶ島々に、オランダの都市名を付けました。
そのひとつが、現在の「デルフト島(Delft Island)」です。島名は、オランダ西部の都市デルフト(Delft)に由来するとされています。
一方、島のタミル語名は「ネドゥンティーヴ(Neduntivu/நெடுந்தீவு)」。これは「長い島」を意味する言葉で、現在も島の正式名称として使われています。
「デルフト」というオランダ名と、「ネドゥンティーヴ」というタミル語名。異なる時代の歴史を刻んだ2つの名前が、現在の島に残されています。
デルフト島の魅力① 野生化した馬が暮らす島
荒涼とした自然が広がるデルフト島では、野生化した馬の姿を見ることができます。
デルフト島の魅力② パルメラヤシが広がる独特の景観
デルフト島を歩いていると、島内のあちこちで、ぼんぼりのように葉を茂らせたパルメラヤシ(Palmyra Palm)を目にします。
スリランカでは、北部・東部の乾燥した地域で多く見られます。乾燥した気候と、石灰岩やサンゴ、貝殻が広がる大地。その中にパルメラヤシやヤシの木が点在する景観は、緑豊かなスリランカの他の地域とはまた違った印象を与えてくれます。
島内を歩き回る牛やヤギの姿も加わり、どこか時間がゆっくりと流れているように感じられるのも、デルフト島ならではの魅力です。
デルフト島の魅力③ 樹齢数百年といわれるバオバブ
写真のバオバブ(Adansonia digitata)は、16世紀のポルトガル統治時代にアラブ商人によって植えられたと伝えられています。
樹齢は数百年ともいわれる非常に古い木で、高さはそれほどありませんが、幹は非常に太く、ずんぐりとした独特の姿をしています。デルフト島の乾燥した大地に立つ巨大なバオバブは、島を代表する見どころのひとつです。デルフト島の魅力④ 巨大なガジュマルの木
島内では、熱帯アジアなどに広く分布するガジュマル(Ficus benghalensis)の大木も見ることができます。
枝から伸びた気根が地面に達して新たな幹となり、さらに枝を広げていくガジュマルは、長い年月をかけて大きな樹冠を形成します。デルフト島にも、広い範囲に枝を伸ばした大きなガジュマルがあり、乾燥した島の景観の中でひときわ目を引きます。
デルフト島の魅力⑤ ポルトガル・オランダ・イギリス時代の歴史遺跡
デルフト島には、ポルトガル・オランダ・イギリス統治時代の歴史を伝える遺構が各所に残されています。
古い厩舎跡
デルフト島が植民地時代に馬の繁殖・飼育拠点として利用されていたことを伝える厩舎跡です。
オランダ・イギリス統治時代には、島で多数の馬が飼育されており、現在も残る遺構の一部は馬を収容するために使われていたとされています。
一方で、現在「オランダ時代のもの」とされている厩舎については、建築時期をめぐって異なる見解もあり、現存する遺構はイギリス統治時代初期に建設された可能性も指摘されています。
他にも、イギリス統治時代の裁判所跡も、石灰岩で造られたオランダ式の伝書鳩小屋など、現在も残るデルフト島の植民地時代を伝える貴重な遺構を見ることが出来ます。
デルフト島の魅力⑥ ハヌマーンの足跡
ヒンドゥー教の伝承によれば、デルフト島は、猿神ハヌマーンがスリランカに戻る際に運んでいたヒマラヤの一部が落ちてできた島とされています。
ハヌマーンは『ラーマーヤナ』の中で、負傷したラクシュマナを救うための薬草を求めてヒマラヤへ向かったと伝えられており、デルフト島に薬用植物が多いことも、この伝承と結びつけて語られています。
島内には、ハヌマーンが残したものと伝えられる「ハヌマーンの足跡」もあります。
写真に添えているサンダルは23cm。足跡と比べると、その大きさがよく分かります。
デルフト島の魅力⑦ ミーカナム砦
「ポルトガル要塞」または「オランダ要塞」と呼ばれることもあるこの遺構は、ポルトガル時代に建設され、後にオランダ人によって使用されたとされています。現在は「ミーカナム砦(Meekanam Fort)」とも呼ばれています。
デルフト島は日帰りより一泊がおすすめ
長さ約8km、最大幅約6kmのデルフト島は、スリーウィールなどを利用すれば、主要な見どころを効率よく巡ることができます。ただし、日帰りの場合はフェリーの往復時間に制約があるため、どうしても駆け足での観光になりがちです。
島の魅力をじっくり味わうのであれば、日帰りではなく一泊して、徒歩やスリーウィールなどでゆっくり島を巡るのがおすすめです。
何より宿泊することで、日帰りでは見ることのできない夕方や朝のデルフト島の風景を楽しむことができます。観光客が少なくなった夕方の島や、朝の静かな風景は、デルフト島ならではの魅力のひとつです。
ただし、デルフト島には宿泊施設が多いわけではありません。宿泊を予定している場合は、事前に宿泊先を確保しておくことをおすすめします。
私がデルフト訪問時に宿泊したのは、フェリー桟橋から徒歩で行ける距離にある「Delft Samudra Hotel」です。設備は簡素で、シャワーは水シャワーのみでしたが、客室にはエアコンが備えられており、離島での滞在としては比較的快適に過ごすことができました。
これから変わる?持続可能な観光地を目指すデルフト島
これまで観光地として十分に活用されてこなかったデルフト島ですが、2026年8月、スリランカ政府が島を持続可能な観光地として開発する取り組みを開始したと発表しました。
今回の取り組みでは、オランダ統治時代の歴史的建造物や、島内に生息する野生馬など、デルフト島ならではの観光資源を生かし、より多くの観光客を呼び込むことを目指し、次期予算やスリランカ観光開発局(SLTDA)を通じた資金確保を進め、飲料水の供給、道路網、交通サービスなどのインフラ整備に加え、地域住民の観光関連スキルの向上などにも取り組む計画です。
これまでのデルフト島は、観光インフラが十分に整っているとはいえず、ジャフナからさらにフェリーで移動する必要もあることから、スリランカの一般的な観光ルートからは外れがちな場所でした。
今回の取り組みによって、今後デルフト島がどのような観光地へと変わっていくのか注目されます。一方で、野生馬や歴史的遺産、独特の自然景観など、現在のデルフト島ならではの魅力が大切に残されていくことにも期待したいところです。
スリランカ本島とは異なる魅力を持つデルフト島
ジャフナからさらにフェリーで移動する必要があり、決してアクセスのよい場所ではない上、フェリーの本数が限られているため、初めてスリランカを訪れる方や、旅行日程に余裕がない方には、少し訪れにくい場所かもしれません。
しかし、野生馬が暮らし、パルミラヤシが茂り、バオバブや歴史的遺構が残るデルフト島には、他のスリランカの観光地では味わえない離島ならではの独特の魅力があり、時間に余裕がある方には、ぜひ訪れてほしい場所のひとつです。
今後、観光地として整備が進められる一方で、現在の素朴で静かな島の雰囲気も大切に残してほしい場所です。
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