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バンダーラウェラの隠れた名建築「グッドシェパード修道院礼拝堂」|ジェフリー・バワとバーバラ・サンソーニの美しい協働

バンダーラウェラに建つグッドシェパード修道院礼拝堂とは

バワ、プレスナー、ラキ、バーバラによる協働

スリランカ中央高地の町バンダーラウェラ(Bandarawela)の丘の上には、1962年に建てられた小さな美しい礼拝堂があります。

「グッドシェパード修道院礼拝堂(Good Shepherd Convent Chapel)」は、ジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa)の代表建築のひとつとして紹介されることがあります。

しかし、この礼拝堂はバワ単独による作品ではありません。

テキスタイルデザイナーのバーバラ・サンソーニ(Barbara Sansoni)を介してバワが依頼を受け、バワ、建築家ウルリク・プレスナー(Ulrik Plesner)、バーバラらによって建築コンセプトが練り上げ、建築家・芸術家のラキ・セナナヤケ(Laki Senanayake)が設計のディテールを具体化したものです、スリランカ近代建築を代表する協働作品のひとつです。

グッドシェパード修道院と礼拝堂建設の背景

1940年代、グッドシェパード修道会はバンダーラウェラにあるバンガローを取得し、修道女たちの休息所および訓練センターとして利用していました。

1961年、修道会はバーバラを通じてバワに礼拝堂の設計を依頼しました。そして翌1962年、この場所に新たな礼拝空間が完成しました。

バーバラ・サンソーニとグッドシェパード修道院の関係

バーバラは敬虔なカトリック信者でした。

彼女はグッドシェパード修道院の修道女たちが手織りによる協同組合を設立する際に尽力し、それをきっかけにスリランカの伝統的な織物文化に深く関わるようになります。

その後、バーバラは自身の芸術表現を建築空間にも広げ、この礼拝堂ではテラコッタによる宗教的レリーフを制作しました。

自然光と石が織りなすグッドシェパード修道院礼拝堂の建築美

礼拝堂は、スリランカで採れる礫岩を使った重厚な石造建築です。外観の大きな特徴は、建物から突き出した四角い塔です。この塔の真下には祭壇が配置され、塔上部に設けられた天窓から自然光が差し込む設計になっています。

時間によって変化する光が祭壇を照らし、石造りの空間に静かな神聖さを生み出しています。

地元の素材を生かした建築思想

礼拝堂の建設では、限られた予算の中で、スリランカ国内で採れる素材を積極的に取り入れました。床には花崗岩、天井などにはフタバガキ科の木材であるセランガンバツ材が使われています。

また、家具や照明器具、像なども、この礼拝堂のために制作されました。

地域で採れる素材を用い、その土地の自然や文化と調和する空間を生み出す思想は、バワが大切にした「トロピカル・モダニズム」にも通じるものです。

3本の十字架と「十字架の道行き」を表現したレリーフ

礼拝堂の片側は大きなガラス張りとなっており、窓枠には3つの十字架が組み込まれています。


これは、イエス・キリストが十字架にかけられたゴルゴダの丘にあった3本の十字架を表現したものです。

一方、ガラス面と対になる石壁には、イエス・キリストが死刑を宣告され、十字架を背負ってゴルゴダの丘へ向かい、磔刑、埋葬されるまでの14場面を表した「十字架の道行き(Stations of the Cross)」のレリーフが掲げられています。

バーバラ・サンソーニが表現した独自の宗教芸術

このテラコッタ製のレリーフを制作したのもバーバラ・サンソーニです。

一般的な宗教美術では人物を写実的に描くことが多い中、この作品ではキリストや登場人物を直接描かず、十字架の形や傾き、抽象的な造形によって各場面を象徴的に表現している点が特徴です。

十字架の道行き(Stations of the Cross)14場面

レリーフの細部が分かるよう拡大し、明暗を調整していますが、不明瞭な箇所があります。ご了承ください。

【第1~4留】

第1留 イエス、死刑を宣告される(Jesus is condemned to death)
第2留 イエス、十字架を担う(Jesus carries his cross)
第3留 イエス、初めて倒れる(Jesus falls the first time)
第4留 イエス、母マリアに出会う(Jesus meets his mother)

【第5~7留】

第5留 キレネ人シモン、イエスの十字架を担う(Simon of Cyrene helps Jesus carry the cross)
第6留 ヴェロニカ、イエスの顔を拭う(Veronica wipes the face of Jesus)
第7留 イエス、二度目に倒れる(Jesus falls the second time)

【第8~10留】

掲載の拡大写真よりも不明瞭なため掲載していません

第8留 イエス、エルサレムの女性たちに語りかける(Jesus meets the women of Jerusalem)
第9留 イエス、三度目に倒れる(Jesus falls the third time)
第10留 イエス、衣を剥がされる(Jesus is stripped of his garments)

【第11~14留】

第11留 イエス、十字架に釘付けにされる(Jesus is nailed to the cross)
第12留 イエス、十字架上で死ぬ(Jesus dies on the cross)
第13留 イエス、十字架から降ろされる(Jesus is taken down from the cross)
第14留 イエス、墓に葬られる(Jesus is laid in the tomb)

バーバラ・サンソーニが表現した詩篇23篇のレリーフ

外観にある5つのアーチ部分にもバーバラによるレリーフを見ることができます。旧約聖書の詩篇23篇を解釈した作品など、彼女自身の信仰と芸術性が融合した作品となっています。

詩篇23篇とは

詩篇23篇(Psalm 23)は、旧約聖書「詩篇」に収められた最も有名な聖句のひとつで、神への信頼と守護を歌った祈りの詩です。

羊飼いが羊を安全な場所へ導く姿を通して、神の慈愛や導きが描かれています。

静かな水辺や緑豊かな牧草地へ導く神、苦難の暗い谷を歩む時にも共にいてくれる神、そして最後には祝福と安らぎへ導く神への信頼が語られています。

グッドシェパード修道院礼拝堂の外観アーチ部分に施されたバーバラ・サンソーニのテラコッタ作品は、この詩篇23篇の世界観を表現したものです。

羊飼いと羊という聖書の象徴を通じて、神による導き、保護、平安への希望を表しています。

バーバラは写実的な宗教画ではなく、羊飼いと羊の象徴を用いて、神の慈愛や平安への希望を表現しました。これは、彼女自身が敬虔なカトリック信者であったからこそ生まれた、礼拝空間にふさわしい芸術作品といえます。

建築・芸術・信仰が融合したバンダーラウェラの名建築

グッドシェパード修道院礼拝堂は、「ジェフリー・バワ建築」という一人の建築家の作品としてだけでは語りきれない魅力を持つ建築です。

バワ、ウルリク・プレスナー、バーバラ・サンソーニによって練り上げられた建築コンセプトをもとに、ラキ・セナナヤケが設計のディテールを形にした、建築と芸術が融合したこの礼拝堂を象徴する重要な要素となっています。

さらに、バーバラによるテラコッタの宗教的レリーフやラキによる祭壇が加わることで、石、木、光、芸術、そして信仰が調和した唯一無二の空間が生まれました。

グッドシェパード修道院礼拝堂は、複数の才能が響き合うことで完成した、スリランカ近代建築の隠れた名作と言えるでしょう。

グッドシェパード修道院礼拝堂は、現在も宗教施設として使用されています。訪問の際は、事前に修道院へ見学の可否を確認し、礼拝時間を避けて訪れるようにしてください。また、見学させていただいた感謝の気持ちとして、献金をお渡しするとよいでしょう。

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ジェフリーバワ全仕事

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専門書に近い内容のため、日本語訳でもやや難しく感じる部分があります。最初の一冊というよりは、バワについてさらに深く学びたい方におすすめです。

原書(英語版)

In Search of Bawa: Master Architect of Sri Lanka 

バワ建築巡礼の参考書を探している方におすすめ

ブライトン大学で建築を教え、ジェフリー・バワとも親交のあった建築史家デイヴィッド・ロブソン(David Robson)による一冊です。

59件のバワ建築について、美しい写真とともに建築の特徴や歴史、所在地、保存状況まで詳しく解説しています。

洋書ではありますが、作品ごとに整理されているため読みやすく、バワ建築を実際に巡りたい方にも役立つ内容です。

個人的には、現在刊行されているバワ関連書籍の中で最もおすすめしたい一冊です。

Geoffrey Bawa 33rd Lane1960-98/Lunuganga1948-98―世界現代住宅全集7

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建築家の自宅には、その人の美意識や建築思想、暮らしの哲学が凝縮されています。

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バワと研吾

クラブヴィラに宿泊予定の方におすすめ

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クラブヴィラに宿泊予定の方はもちろん、バワ建築が時代を超えて受け継がれていく様子を知ることができます。

番外 [雑誌]  Casa BRUTUS 2026年 6月号 [日本+アジア 話題の絶景宿]

2026年6月号では、「ジェフリー・バワを求めて、今、再びスリランカへ」と題した特集が組まれています。

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