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【ベントタ】感染道路脇にある静寂のジェフリー・バワ建築『Boutique 87』

ランカフルカターワ
以前の投稿『🔗ベントタ バワスポット』で紹介したとおり、スリランカ南西部のベントタ(Bentota)は、バワが建築家を志すきっかけとなった自邸ルヌガンガ(Lunuganga)をはじめ、彼が手がけた建築が数多く残る場所です。

現在、ベントタには宿泊可能な“バワ建築”が7か所あります。

Boutique87(ブティック87)とは

ベントタにある客室3室だけのバワ建築

ベントタのバワ建築の中で、総宿泊客数が最も少ないと思われるのが、今回ご紹介するブティック87(Boutique87)でではないでしょうか。
というのも、宿泊可能な客室がわずか3室(以前は2室)のみだからです。

私は2019年に宿泊しましたが、その後経営者が変わり、内装なども変更されているようです。そのため、これまで紹介を控えていました。しかし、全体像がやや分かりにくいホテルでもあることから、今回あらためてご紹介することにしました。


「森の中のホテル」と呼びたくなる18エーカーの庭園

このブティック87をひと言で表すなら、「森の中のホテル」
約18エーカーの敷地に2棟の建物が建てられており、そのうち実に17エーカーが庭園です。つまり、敷地のほとんどが緑豊かな庭なのです。
敷地内にある教会風の建物。もともと外観のみで、朽ち果てたようにバワが設計

Boutique87の歴史|ジェフリー・バワが手がけた邸宅

幹線道路沿いとは思えない静寂の空間

この空間、どのような場所にあると思いますか?
冒頭の地図の赤丸で示したとおり、なんと幹線道路沿いに位置しています。
しかも、建物の一つは道路に直接面しています(下記黄色枠)。

↑上の画像1枚は📍Google Mapより
しかし、下の写真のとおり、敷地内から見るとその気配はほとんど感じられません。背後が交通量の多い幹線道路だとは思えないほどです。

イタリア人彫刻家夫妻のために設計された住まい

この不思議な空間を持つブティック87は、もともとイタリア人彫刻家のLidia DuchiniGunasekara夫妻の邸宅でした。

1978年、家を探していた夫妻に対し、バワは道路を挟んで向かい合う18世紀築の2軒の古民家(それぞれ1720年代築と1740年代築)の購入を勧めたといいます。夫妻はバワの助言を受けてこの2軒を購入し、改築を依頼しました。

2棟の建物に込められたバワの設計思想

一方の家は、もともと入口が道路側にありましたが、建物の向きを180度転換して入口を敷地側へ向け、庭を楽しめるように設計し直しました。さらに道路側には目隠しの壁を設け、防音性とプライバシーを確保しています。
↑以前のホテル経営者の時はスタッフルームとして使われていましたが、現在は「ダブルルーム」として1組の宿泊が可能となっています。
もう一方の家は解体し、出入口の枠や窓、木柱など再利用可能な部材のみを残しました。そして、それらの部材を活用しながら、母屋に対して90度の位置に新たな建物を設計・建築しました。
↑現在は「プールサイドスイート/レイクサイドスイート」として、1棟2組の宿泊が可能です。
もともとリディアの作品を展示するギャラリーだった2階部分は、現在では2つの客室の共有スペースとなっています。
↑上記5枚の画像は2019年時のもの。現在の内装と変わっている可能性あり。
以前は、バワがマクロ撮影したモノクロの植物の写真パネルが飾られていました(上記写真)が、現在は別の額が飾られているようです(下記写真)。
↑上記1枚の画像は🔗Boutique87の公式サイトより転載
↑上記5枚の画像は2部屋の共有エリア。写真は2019年時のもので、現在の内装と変わっている可能性あり。
バワ建築の特徴でもある、美しい曲線を描く階段の手すり。その脇には、リディアの彫刻作品が飾られています。

客室は左右対称に近い造りで、広さや基本構成はほぼ同じですが、内装はそれぞれ異なっています。

Boutique87の客室

▶Poolside Suite◀

↑上記1枚の画像は2019年時のもの。現在の内装と変わっている可能性あり。
↑上記2枚の画像は🔗Boutique87の公式サイトより転載

▶Lakeside Suite◀

↑上記1枚の画像は🔗Boutique87の公式サイトより転載
↑上記3枚の画像は2019年時のもの。現在の内装と変わっている可能性あり。
室内の窓や庭への出入口には白い鉄格子の引き戸が設置されており、木製の扉を開け放したまま鉄格子を閉めることで、採光と通風を確保できる造りになっています。
なお、この鉄格子は、1996年にこの家を購入したロハン・ジャヤコディ氏の時代に、防犯対策として追加されたものだそうです。
↑鉄格子の扉をあけ放したところ

▶Double Room◀

↑上記1枚の画像は🔗Boutique87の公式サイトより転載

↑上記1枚の画像は2019年時のもの。現在の内装と変わっている可能性あり。

プールは後年バワと相談しながら増設された

ブティック87のカバーフォトとしてよく使われるプールも、グナセカラ夫妻の時代には存在しておらず、鉄格子と同様にジャヤコディ氏によって1996年以降に新設されました。
もっとも、ジャヤコディ氏はバワに相談しながらプールを設置したとのことです。
なお、ジャヤコディ氏はスリランカ第2代大統領Ranasinghe Premadasaの娘婿であり、実業家としても知られています。
ちなみに、ジャヤコディ氏のコロンボの邸宅は、バワがコロンボで最後に手がけた一般住宅(1991~1996年)で、『🔗コロンボ バワスポット(⓫ The Jayakody House)』で紹介しています。

宿泊だけでなく庭園見学やランチ利用も可能

現在は宿泊だけでなく、事前予約により庭園見学やランチ、キャンドルディナーのアレンジも可能とのことです。

まとめ

ベントタに点在するバワ建築のなかでも、Boutique87はわずか3室という小規模なブティックホテルならではの静けさが魅力です。

18エーカーの敷地のほとんどを占める緑豊かな庭園、イタリア人彫刻家夫妻のために設計された建物、そして幹線道路沿いとは思えない静寂の空間には、自然と建築を一体化させるジェフリー・バワの思想が色濃く表れています。

現在は内装の一部が宿泊当時(2019年)から変更されていますが、空間構成や建築の魅力は変わりません。宿泊はもちろん、庭園見学や食事利用もできるため、ベントタでバワ建築を巡る際にはぜひ訪れたい一軒です。

最後に門を開けて幹線道路へ戻った瞬間、あれほど静かだった森のような空間が、わずか一枚の壁によって生み出されていたことにあらためて驚かされます。その劇的な空間体験こそ、Boutique87ならではの魅力と言えるでしょう。

静寂の森に背を向け、門戸を開けると再び喧騒の世界に

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