以前は、ラキ・セナナヤケの作品が見られるジェフリー・バワ建築を紹介しました。
⇒🔗ジェフリー・バワ建築で見るラキ・セナナヤケ(Laki Senanayake)の世界
今回は、エナ・デ・シルバの作品を鑑賞できるジェフリー・バワ建築のホテルにスポットを当て、その魅力を紹介します。
エナ・デ・シルバとは?
スリランカを代表するバティックアーティストです。
1960年代以降、徐々に廃れつつあったバティック(ろうけつ染め)に新たな命を吹き込み、その技法を芸術作品の域まで高めました。スリランカのバティック産業を再生させた人物ともいわれています。
1981年にはマータレーに工芸品の共同組合「マータレー・ヘリテージセンター」(現在のアルヴィハーラ・ヘリテージセンター/Aluwihare Heritage Center)を設立。ここではバティックだけでなく、刺繍や木彫り、真鍮鋳物など、スリランカの伝統工芸や技術の復興にも尽力しました。
さらに、生涯にわたりバティックや刺繍を探求し続け、スリランカのテキスタイルを新たな芸術分野として確立することに大きく貢献しました。
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🔗エナの作品が日本で見られる‼『エナデシルバ展示会』(ジェフリー・バワ建築に息づく「サンバースト」の魅力と展示作品を紹介)※展示会は現在終了しています
1. No.5(エナ・ハウス/ルヌガンガ):ジェフリー・バワとエナ・デ・シルバが生み出した住まい
名前の通り、エナと夫オスマンド(Osmund De Silva)の自邸として、1962年にコロンボに建てられました。この自邸の設計をきっかけに、バワとエナは親交を深め、仕事上のパートナーとしても協働するようになり、以降、多くのバワ建築でエナのバティックが効果的に取り入れられるようになりました。
2009年にこの家が売却された際、バワ財団が建物を買い取りました。柱の向きや床板、タイルや石の配置、中庭の樹木の位置に至るまで一つひとつに番号を付けて記録し、建物を解体。その後、ベントタのルヌガンガに隣接する土地へ完全な形で再建(移築)し、2016年に完成しました。
現在、ルヌガンガの宿泊施設「No.5」として運営されており、3室に宿泊できます。
この家にはエナの希望やアイデアが随所に取り入れられており、まさにバワとエナが協働して生み出した住まいといっても過言ではありません。
館内には、リビングやダイニングなどが随所に、エナのバティック作品が飾られており、まるで「エナ・デ・シルバミュージアム」のような空間となっています。
↑リビングエリア
下記はスリランカ古来の旗を基にしたバティック
双頭の鳥(Gandaberunda)のモチーフは、南インドに起源をもつとされています。インド南西部のカルナータカ州に多く、1505年頃に流通した硬貨や、現在のカルナータカ州の紋章にも描かれています。
このモチーフはスリランカでも広く用いられており、14世紀建立とされるエンベッカ寺院の柱の1つにも彫られています
下記のバティックパネルは、ベントタにある「Cinnamon Bentota Beach」のレセプション天井に使われていたものです。ホテルの全面リニューアルに際し、2020年にアルヴィハーラ・ヘリテージセンターで新たに制作されたため、それまでレセプションで使用されていたパネルがNo.5へ移されました。なお、一つひとつのモチーフは、エナの息子アニルが描いた絵を基にデザインされています。
↑(参照)エナのバティック天井で彩られたCinnamon Bentota Beachのレセプション
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2. ヘリタンス・カンダラマ(Heritance Kandalama):バティックと工芸作品
ヘリタンス・カンダラマは、エナのバティックだけでなく、木彫りや織物など多彩な工芸作品も鑑賞できるホテルです。
Kanchana Bar脇の階段には、エナが手掛けた木彫りの人形が飾られています。これは古くから伝わる木製人形をモチーフに、大型のオブジェとして制作されたものです。
壁面にもバティック作品があしらわれており、ロイヤルスイートルーム全体がエナ・デ・シルバの世界に包まれたような空間となっています。
3. アナンタラ・カルタラ(Anantara Kalutara):バティックとテキスタイル
ホテルに入ると、まず目を引くのがレセプションに飾られた巨大なバティック作品です。
| ↑Number11のガレージに飾られているバティック |
このホテルには、バワの設計図やデザイン家具などを展示したライブラリー兼ミュージアムともいえる「バワルーム(Bawa Room)」があります。その中央にも、「サンバースト」の作品が飾られています。
(余談)ホテルの歴史
1994年、当時「シンドバッド・ガーデン(Sindbad Garden)」という仮称でホテルの設計を依頼され、工事は約75%まで進んでいました。しかし、1996年1月にコロンボで発生した爆弾テロの影響でスリランカの観光業は大きな打撃を受け、ホテルの建設も中断されます。
こうして完成したアナンタラ・カルタラは、ジェフリー・バワの遺志とエナ・デ・シルバの芸術が息づく、貴重なホテルとなっています。
4. ジェットウィングライトハウス(Jetwing Lighthouse):バティック天井
メインレストラン「Cardamom Café」では、天井に大きなバティックがテントのような曲線を描いて設えられ、空間全体に優雅で開放的な雰囲気を演出しています。
バーの天井を飾る作品の制作を依頼されたエナは、バワの意向を受け、17世紀のオランダ植民地時代にオランダ政府から贈られたセイロン(現在のスリランカ)の紋章や、当時の国旗・紋章をモチーフにデザインしました。
↑上記1枚の写真はホテル公式ページより転載ちなみに、このバーはサントリーウイスキー『碧 Ao』のテレビCM「世界のどこかで。」篇のロケ地として使用され、多くの人にその美しい空間が知られるきっかけとなりました。
ジェットウィング・ライトハウスでは、エナのバティックがテーマと見事に調和し、バワが目指した空間デザインを体感できます。
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まとめ
ジェフリー・バワの建築は、建物だけを見ても十分に魅力的ですが、その真価は、エナ・デ・シルバやラキ・セナナヤケ、バーバラ・サンソーニなど、多くのアーティストとの協働によって生み出された空間全体にあります。
エナのバティックや織物、木彫りの作品は、単なる装飾ではなく、建築と一体となって空間を彩る重要な要素です。ホテルごとに異なる作品やデザインを見比べることで、それぞれの建築が持つ個性や、バワが目指した空間づくりへのこだわりをより深く感じることができるでしょう。
宿泊の際には、ぜひ館内に展示された作品にも注目してみてください。
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