ジェフリー・バワによるコロンボの名建築
現在宿泊できるコロンボのバワ建築
ジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa)は、コロンボ市内(Colombo)だけでも60件以上※の建築物を手がけました(※バワが所属していた建築事務所が手がけた案件も含む)。
そのうち、現在宿泊施設として利用されているのが次の3軒(追記:2026年時点で4軒)です。
❶ナンバーイレブン(Number 11):バワ自身が暮らした住居
❷The Tower by Geoffrey Bawa:かつてバワが施主夫妻の娘のために設計した住宅
❸De Saram House:親交の深かったデ・サラム一族の音楽一家のために、バワが改築・増築を手がけた住宅
2026年追記)④Jetwing Ratnam Residence:かつてバワが施主一家のために設計した住宅
(その他の、コロンボのバワ建築については『🔗コロンボ・バワスポット(前編-9か所)』『🔗コロンボ・バワスポット(後編-16か所)』をご参照ください)
❸のデサラムハウスは、『🔗ジェフリーバワとデ・サラム家』で紹介していますが、宿泊を検討している方がわかりやすいように、デサラムハウスの部分だけを再掲しました。
De Saram Houseとは?ジェフリー・バワが改築したコロンボの名建築
デ・サラム家とジェフリー・バワの深い交流
ドゥルヴィデサラム(Druvi De Saram)は、Robert de Saramの4人の子供の1人でピアニストです。
この家は、元はドゥルヴィの両親が所有していた家と敷地でしたが、Druviが譲り受け4人家族の住居として1986年にバワに改修ならびに増築を依頼しました。
バワは、ドゥルヴィの両親が住んでいた家も含めて改築し、外壁と古いガレージの間を連結させ、そこにも部屋を造り全体に1つの家を作り上げました。
この家は、中庭を中心に5つの棟で構成されていますが、すべて廊下(内廊下または外廊下)でつながっています。

このDruvi de Saram Houseは、半屋外のリビングスペースなど、内と外の境界が曖昧なバワらしい設計となっています。
バワ財団による修復と一般公開
一家がイギリスへ移住した後は、約25年間にわたり賃貸住宅として利用されたり空き家となったりしていましたが、バワ生誕100周年記念事業の一環として、2019年4月にバワ財団が管理と修復を引き継ぎました。
改修にあたっては、バワの弟子である建築家アミラ・デ・メル(Amila De Mel)が監修しました。
アミラ氏は「バワの天才的な才能は、建物を解体して初めて実感できる」と語っています。修復作業の中で、スリランカ内戦期の輸入規制下において、限られた材料を活用するためのバワの工夫が建物の随所に散りばめられていることを実感したそうです。
De Saram Houseの見学方法(ガイドツアー)
見学は事前予約制
事前予約が必須ですが、見学も可能です(料金: LKR 2000-外国人、LKR 1000-ローカル&居住ビザ所持者)。
予約方法はメール(admin@geoffreybawa.org)のため、日にちに余裕をもっての予約をお勧めします。
見学できるエリアと注意点
なお、ツアーでは前庭、後庭、ダイニングスペースのみ見学可能で、客室や音楽室は基本的に見学ルートに含まれていません。
4つの客室を紹介
客室は全4室です。ドゥルヴィ氏らが一時帰国時に利用することもあるとのこと。
❶ King Suite Room|最も広い客室
ゲートを入って、すぐ横にある建物の2階にある部屋です。1階は後ほど紹介する音楽室です。
この建物は、もともとドゥルヴィの両親が暮らしていた築100年以上の住宅でした。
廊下はリビングエリアの役割も果たしています。

※上記4枚の画像は🔗Hotels.comからの転載

4室の中で最も広い客室ですが、バワによる改修箇所は比較的少なく、階段や室内などは元の造りが多く残されているとのことです。
そのため、バワらしい建築デザインを堪能したい方は、他の3室を選んだ方が満足度が高いかもしれません。
一方で、洗面所とは別にキッチンの流し台があり、他の客室の動線とも交わりにくいため、長めの滞在やプライベート感を重視する方には最も過ごしやすい部屋ともいえます。
❷ Standard Queen Room|独立性の高いコンパクトな客室
ゲート正面のガレージ棟2階にあるこの部屋は、デサラム夫妻の末娘Radhikaの部屋でした。
他の客室とは入口も位置も異なり、独立性の高い造りになっています。
この部屋の手前は、扉のないオープンリビングになっています(写真下)。

この部屋は4室の中で最もコンパクトですが、夜や豪雨の時など簾が下ろされると、オープンリビングを半ば専有するような感覚で利用できます。(写真下)。
この部屋は4室の中で最もコンパクトですが、夜や豪雨の時など簾が下ろされると、オープンリビングを半ば専有するような感覚で利用できます。(写真下)。
❸ Deluxe King Room|バワの設計が光る客室
オープンリビングの向かいに2連続きであるのがデラックスキングルームとデラックススイートルームです。
ピンク色にマンゴーイエローのラインを組み合わせた壁の色彩は、ドゥルヴィが好んだイタリア・トスカーナ地方の建築から着想を得たものだといいます。
デラックスキングルームは、DruviとSharmini夫妻のマスターベッドルームとして建てられました。部屋はメゾネットになっており、中2階は収納とワークスペースとなっています。
なお、ベッドの両脇に飾られたタペストリーとソファのクッションは、2021年に🔗ユネスコ無形文化遺産に登録されたドゥンバラ織の職人ソーマワンサ氏と、ベアフットの🔗ドゥンバラコレクションのものです。
メゾネット部分のアンティークの極彩色の柱(写真下)
バスルームのシャワーブース上には明かり取りが多く使われており、自然光の美しいつくりになっています(写真下)シャワーブースは細長く歪な形状をしています。
これは建物が敷地境界線に沿って建てられているためだそうです。

❹ Deluxe Suite Room|Deluxe King Roomとの比較が面白い
この部屋は、デサラム夫妻の長女Mandhiraの部屋だった場所です。
部屋の構成は隣のデラックスキングルームとほぼ同じですが、ベッドの向きや窓の配置が異なります。
こちらの部屋は出窓が深く取られており、ソファのように利用できるのが特徴です。

洗面所(写真下)
以上が全4室の客室です。
ここからは既に紹介したオープンリビング以外の共有部分を紹介します。
共有スペースで感じるバワ建築の魅力
Standard Queen RoomとDeluxe Suite/Deluxe King Roomの間にあるのがリビングルームの入り口。
自然と一体化したダイニングルーム
宿泊者が朝食をとるのがこのダイニングルームです。
部屋の長さに合わせた大きなテーブルが置かれており、中央にはラキ・セナナヤケ(Laki Senanayake)によるフクロウの絵が飾られています。

開放感あふれる半屋外リビング
テーブルの片側は扉はなくオープンとなっています(写真下)。小さな中庭にはフランジパニとオレンジジャスミンの木が植えられており、ピンク色の柱と壁がアクセントとなっています。

デサラム邸の修復事業の一環として、バワ財団はバワ自身の美術コレクションとデ・サラム家のコレクションの保存・展示も行いました。
もう片側には長さに沿って連なる開閉式の扉となっており、扉を開け放つと池を見下ろすことができます(写真下)。
実は、この開放感あふれるオープンダイニングの設計について、Druviの妻Sharminiは当初あまり乗り気ではなかったそうです。
しかしバワは、「ダイニングルームを閉じてしまうと単なる廊下になってしまう」と主張し、その考えを証明するために仮設の壁を設置して見せました。
その結果、Sharminiもバワの案を支持するようになったといいます。
音楽室に残るデ・サラム家の歴史
Druviのグランドピアノ(ヤマハ製)がおかれた音楽室兼リビングルーム。
採光の取り入れ方が特徴的な窓(写真下)
デサラム家が所有していたスリランカ仮面コレクションの一部※も展示されています。
※残りはロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に所蔵されているとのこと。
デサラム邸の修復事業の一環として、バワ財団はバワ自身の美術コレクションとデ・サラム家のコレクションの保存・展示も行いました。
20世紀スリランカ美術を伝える貴重なコレクション
これらには20世紀スリランカ美術を代表する「🔗美術家集団43グループ」の作品も含まれており、スリランカ美術史を語るうえでも貴重な展示となっています。
※上記1枚の画像は🔗Hotels.comからの転載
上記に飾られた6枚の絵は、左上からデサラム家の先祖(Christo el Henricus de Saram/1755~1841年)の肖像画、その下はバワが所蔵していた『Boy with Bull (Richard Gabriel作)』from the Geoffrey Bawa collection)、その隣の油彩画は『Family on Beach(Ivan Peries作)』、中央の大きな絵はDruviの叔父にあたるJustin Deraniyagala作の『Fruit Seller』右端も同じくJustin Deraniyagala作の『Musician』となります。
音楽室のみならず、各客室や廊下など多くの絵画が飾られています。
バワが愛した空間に残るエピソード
この家の改装/増築をきっかけに、デサラム夫妻とバワは友情を深め、夜になるとバワはこの家に立ち寄り、夫妻とお酒や夕食を共にしたといいます。しかし、バワは「Fruit Seller」の絵があまり好きではなく、リビングでくつろぐときは必ずこの絵が見えない位置に座ったというエピソードが残っています。
まとめ
De Saram Houseは、単なる歴史ある住宅ではなく、ジェフリー・バワとデ・サラム家との友情から生まれた特別な住まいです。
中庭を中心に複数の棟を回遊する構成や、内と外がゆるやかにつながる半屋外空間など、バワ建築ならではの魅力が随所に感じられます。さらに、ラキ・セナナヤケや43グループの作品をはじめとする美術コレクションも残されており、建築だけでなくスリランカ文化にも触れられる貴重な場所です。
コロンボでバワ建築に宿泊できる施設は限られています。その中でもDe Saram Houseは、暮らしの痕跡を色濃く残しながら、現在も宿泊・見学の両方ができる数少ない建築です。建築やデザインに興味のある方はもちろん、ジェフリー・バワの世界観をより深く体感したい方にもおすすめの一軒です。







.jpg)


コメント
コメントを投稿